劇場公開日 2021年3月26日

「彼女の向かう先は?」ノマドランド ショコワイさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5彼女の向かう先は?

2021年4月2日
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悲しい

1 企業の破綻から住む家を失くし、車上生活者となった一人の女性の生活ぶりと道中での出合いや別れを描いた人間ドラマ。

2 この映画では、車上生活の実相が丁寧に描かれていて興味深い。調理や居住機能を備えたキャンピングカーでの生活。レジャーであれば気楽で良いが、蓄えがなければ、日雇いの仕事を得てガソリン代や生活費を得ながら移動する。孤独な夜、缶詰の食事、病気のリスク、排泄事情、車のトラブル。それらに直面する過酷な暮らし。それでも、主人公は決して尊厳は失わない。「私はホ−ムレスではない、ハウスレスだ」と。そして、人嫌いでもない。各所で同じ車上生活者と出合い、触れ合い助けあう。

3 映画の中で、主人公は寒々とした侘しい車上生活と相反する温かでフレンドリーな家庭生活に浸る機会を持つ。一歩踏み出せば普通の暮らしに戻るチャンスを得る。今は廃墟となった町で、かつて住んでいた家を訪ねた後、家財道具を置いていたレンタルスペースを解約し彼女は、車を走らす。彼女が選んだのは果たして?そして彼女の向かう先は?
その答えは示されてはいないが、ラストで「ハッピーニューイヤ―」と周りに声を掛けながら歩く姿に彼女の決意と希望が感じ取れた。

4 主人公は、スリービルボードで強烈な印象を与えたが、本作でもノ―メ―クて干からびた外見の役作りと心のゆらめきを外に出さない抑えた演技を自然体で演じていた。

ショコワイ