劇場公開日 2021年3月26日

「ノマド生活に憧れる」ノマドランド shoheiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ノマド生活に憧れる

2021年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

私はアメリカの荒涼とした大地を自動車で走るのが好きだし、映画に出てきたバットランド国立公園(とWall Drug)が懐かしかったので、むしろノマド生活に対する憧れを強く感じた。季節ごとに、Amazonの仕分け業務や、RV宿泊施設のトイレ掃除など、季節的な仕事はけっこうあるもので、キャンピング・カーに居住しながら、高齢者が自由に生きていけるならそれでいいじゃないかとすら思った。ネバダ州の企業城下町で夫と暮らしていたが、夫とは死別し、リーマン・ショック後に会社が倒産したことで、町がなくなってしまう。60歳にして主人公のファーンはノマド生活を始める。若い頃の企業城下町への定住生活は映画の中であまり描かれていない。だが、会社が大好きで従業員と家族ぐるみの付き合いしていた夫と一緒に暮らしていた幸せな生活であったことが、映画の中で語られる。それはノマド生活と全然違うように思えるのだが、映画を観ているとその延長線にあるようにすら思える。過去の思い出を懐きながら、自由にアメリカを移動するファーンは、やはりそれまでの人生の延長を生きている。フランシス・マクドーマンドが本当に素晴らしいなと思う。他に登場する人たちも実際のノマド生活者であるらしいし、彼女らが実に魅力的であるから、やはりノマド生活に対する憧憬を感じたのだろう。監督は中国系アメリカ人のクロエ・ジャオ。彼女の撮ったアメリカの大地の景色が本当に壮観であり、主人公の心象をうまく象徴していたと思う。アカデミー作品賞はノマドランド、主演女優賞はフランシス・マクドーマンドかな。

shohei1484
pipiさんのコメント
2021年4月15日

バッドランド国立公園行かれたのですね。お羨ましいです。
私もいつか、サウスダコタ・ノースダコタを車で縦断してみよう!と改めて思いました。

終盤の意識変革を得るまで、映画内大半の時間のファーンは「夫と定住していた時の延長上」にあるという点、非常に共感です。

pipi