「“外へ見せられない社会”への問いかけ」親愛なる同志たちへ 室木雄太さんの映画レビュー(感想・評価)
“外へ見せられない社会”への問いかけ
不自由さの中で、自由の実態は浮き彫りとなる。
理不尽が蔓延る国の中でも、それらを渇望し声を震わせながら訴えた民はいたのだ…確実に、今も尚。トロツキー暗殺から始まったスターリンの恐怖政治を、没後批判したフルシチョフの時代、それは開放的な側面の裏で、再び弾圧が強化された歳月でもある。信じた思想、揺るぎなき信念は、時に隣人の安全が脅かされる不穏な日々を境に、疑念と葛藤を生み出した。本作は、その矛盾が特に苦しくのし掛かったであろう60年代にて、今以て理解するべき「人間の尊厳」と「民衆の力」を突き付ける。均等と統率の遵守において、臆病なほど目を光らせる社会主義下では、群衆の力は恐れられ、暗殺と抹消は伝統となり、マルクスの理想は机上の空論である事を、この国の歴史一つとっても立証しているのだが…現在、独裁者を再び求めているのもまた群衆であるのだ。歴史における彼等の末路を冷静に把握するべき時に、この作品が上映された意味合いも大きいのだ。
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