「理不尽が押し流していく」ニューオーダー コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
理不尽が押し流していく
正直いって、面白い見世物ではなく、下手なホラーより怖い代物。
こういうディストピアものの映画は過去に何作も観てはいるし、新鮮味はないものの、作り物感が薄くてリアリティに振ってありました。
架空の事件ではあるのだが、これと似たような事件は直近でも世界各地で起きています。
シリア、チュニジア、リビア、エジプト、イエメン、ミャンマー、香港、ベラルーシ……
そしてウクライナ。
20世紀以前もナチスドイツ、ソ連など。
国家に対する不満が暴徒と化し、その鎮圧に乗じて軍部が暴走。
または近隣国家へ侵攻し、占領地で軍が我が物顔でふるまう。
その間、市民の命は軽く、ごみのように扱われる。
結果的に、軍事勢力が支配し、旧来の平和や秩序は失われ、理不尽が市民を押しつぶしていく。
そんな繰り返されてきた蛮行を、メキシコを舞台にシミュレートしたのが本作。
ネットやニュース番組ではさらりと出てくる映像にすぎないが、いかに残酷なことかを直視せよ、という強烈なメッセージが込められた作品になっていたように感じました。
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