「当時のARIAファンにしか得られない感情があった」ARIA The CREPUSCOLO 猫社長さんの映画レビュー(感想・評価)
当時のARIAファンにしか得られない感情があった
事前準備が必要かという話がたびたび出ますが、事前準備があるとないとで流す涙の理由が変わります
が、今からARIAに触れる人はその事前準備を完遂するのは難しいと残念にも思います
事前準備として必要な作品外の出来事をお話します(ネタバレレビューですが)
今回の主役、アテナ役の声優は亡くなられました
前作ARIA the AVVENIREでは当時の声優の生前の録音音声を用いて喋らせ、映画クレジットにも故人の名前を載せるという、敬意を感じられるキャラクターの扱いにファンから賞賛の声が上がりました
今作ではアテナ役の声優を変更して新規収録しています
仕方ないこととはいえ、前作の事を思うと少し寂しく思いました
アテナにはもう一人声優がいます
歌が上手い設定なので、歌パートを担当していた歌手の方です
彼女も、亡くなられました
アニメ完結後、すぐの出来事だったのを記憶しています
今回演技の声優は変わりましたが、歌唱は変わらなかったのです
もちろん生前の音声を使用しています
それであの展開で、故人とのデュエットが歌われたのです
懐かしい歌を、懐かしい歌声で、懐かしいキャラクターの絡みの上で、生き生きと歌っていました
当時からのファンでこれらを知っていた私は、
ああ、この映画は我々視聴者に向ける以前に河井さんへ向けた鎮魂歌だったんだと気付きました
演技の川上とも子さんへの追悼は前作で済ませていて、今作は代役を立ててでも河井英里さんへの追悼を行ったのだと
アテナを大切に思うが故の新規収録だったのだと
気付いてからは涙が止まりませんでした
ああ、鎮魂歌といってもお葬式のようなムードじゃありません
とても煌びやかな鎮魂歌で、当時遺作を聞いて流した悲しい涙とは違って、すごく温かな涙が流れました
十数年来の鎮魂歌です
今話したような事前知識を今から入れたところで、鎮魂歌のようには聞こえないだろうし、聞こえても同じ理由の涙は流れないと思います
そこには十数年越しの実現という月日と懐かしさがあったから、涙が温かかったのですから
ですので、私はこの映画をARIAを見るきっかけとして初めての方にオススメしたくはありません
しかしARIAを放送当時から追っていて、川上さん河井さんの死も悲しんだ方で
だけども歳を重ねてアニメなんか見てる暇がなくなったという方には、今作だけは無理を通してでも必ず見てほしいと伝えたい
温かくって優しい涙を流しながら聞く鎮魂歌
堪える必要がなく、嗚咽もないのに止めどなく流れる涙
こんな経験、当時からARIAを知っている人がこの映画を見るっていう難しい条件下でしか得られません
もし当てはまる人でまだ見ていないのにここを覗いてしまった人
ぜーったいに見てください
あと知らなかった方々は
それほどか〜?と思えるほどおっさん達が泣き散らかしてるのにはこんな背景があるんだと
知ってくれると嬉しいです
河井さん、どうぞ安らかに
あなたの歌声はいつもARIAファンの心に、アテナさんそしてアリスちゃんと共にあり続けることでしょう
これまでARIAの映像の中では広橋さんの「ルーミスエテルネ」は使われましたが、アテナさん版の「ルーミスエテルネ」が使われてなかったのも、この時の為。というのは言い過ぎかもしれませんが、ピースがかっちりハマったような感覚でしたね。