「おひとりさまの気ままな生活とその終焉」私をくいとめて よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
おひとりさまの気ままな生活とその終焉
いや、本当にいい映画だったわ……
元々能年玲奈改めのんが『あまちゃん』の時から大好きなので、どうしても贔屓目にはなってしまうのだけど、大人の演技ができるようになった彼女が見せる様々な表情が、いずれも素晴らしい。温泉で「いい加減にしなさいよ!」と怒りを滲ませる顔、Aに引きずり回され、素に戻った時の憤慨する顔、ホテルの廊下で感情を持て余して泣き叫ぶ顔、どれも良いのだが、一番はやはり飛行機着陸時の恐怖から「くーーーーーっ」で解放されたときの顔だろうか。もっと色々あるのだけど、語り始めたら留まらないのでこの辺で。
心の中にいるもうひとりの自分と会話する人は、そんなに少なくないはずだ。だがみつ子におけるAのように、これほどまではっきりとした人格を持ち、時には人格交代まで起こしてしまうのは、有り体に言って多重人格障害と言っても良い。
しかし、このみつ子とAの会話によって生み出される独特の空気感が、このストーリーにグルーヴと可笑しさを与えている。それだけに、みつ子が多田くんと付き合いだした頃から徐々に距離を取り始めたAが、多田くんとの初めての夜(何もしてないけどね!)、最後に「ちょうどいい」姿を見せて消えた時に、そこはかとない寂しさを覚えたのだった。
いつかまた、みつ子がAと再会できる日が来るのを祈ってやまない。
なお蛇足を承知で言うと、繰り返しになるが『あまちゃん』からののんファンであるわたしとしては、やはりイタリアでの皐月との再会からの一連のシーンに涙せざるを得なかった。このキャスティング神かよ。
わたし先日アマプラで『私をくいとめて』見直しまして、やっぱりあの二人のシーンが良かったなって改めて思いました。
みつ子にはちょっとしたわだかまりがあり、皐月にはずっと圧し殺してた寂しさがあり、お互い何か素直になれなかったのが、ふとしたきっかけでぱあっと開けたように元の親友同士に戻って打ち解けて。すごくいいです。
メタ的に見ると、あまちゃんの時からちょっと間が空いて、探り探りだったのがあそこで元の仲良しになれたのかしらねみたいに見えてしまって。