「映画も登場人物もちょうどいい」私をくいとめて JJJJJさんの映画レビュー(感想・評価)
映画も登場人物もちょうどいい
独身や恋愛離れがスタンダードとなった現代において、本作の予告が他人事とは思えず興味を惹かれた人は多いと思います。(私も御多分に洩れずその1人)
みつ子が自身の恋愛感情に戸惑う様子は、独り身生活を謳歌する者としてリアリティがありました。独りが心地良い分、他人を通じて湧き出る感情が少し怖いんでしょうね。私はのんさんを初めて拝見しましたが、みつ子のマイペースな性格が見事にハマっていました。
そんなマイペースなみつ子に恋する多田君。彼のもどかしい態度は、奥手男子にとっては我が事のように思えたのではないでしょうか。みつ子とのコミュニケーションが徐々にハマってく展開に、私は2人の友人になったかのように嬉しくなりました。
みつ子と多田君の共通点は、2人が具現化されたAのように「丁度いい」存在であることです。2人は容姿が特別良いわけでなく、エリートでもありません。"大多数側"なのです。私は恋愛リアリティショーというコンテンツに興味がないのですが、その理由は登場人物達に恋愛におけるハンデがなさすぎて感情移入できないからです。「おめーらココで失敗しても他で幾らでもチャンスあんだろ!」って思っちゃうんです(…く、悔しい!)。そんな私にとってみつ子と多田くんの恋愛劇は心地良く、素直に応援しながら見ることができました。
ただし、この作品が映画とて良作かと問われると、そうではないというのが率直な感想です。
まず、全体的に無駄が多いです。例えば飛行機のシーン。「口びる」というワードをあれだけ強調して演出をしておきながら、最後まで口びるが重なるシーンはなし。登場人物の不器用な心に忠実になるのはいいのですが、バロメーターの高まる瞬間がなければエンタメとしては消化できない。
また、上映時間が133分の割に印象が薄いです。弱者の気持ちをキャッチアップするシーンが幾つかありましたが、大して響きません。脇を固めるキャストについても、皐月は大事な役回りの割に印象は薄く、カーターはキャラが濃い癖に上っ面のまま終わりました。
本作はあくまでもほのぼのした恋愛物語であり、刺激抑え目の丁度良い作品なのです。