劇場公開日 2020年12月18日

「のんと林遣都の演技が光る、ちょっと変わった「邦画では珍しい意欲作」。」私をくいとめて 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5のんと林遣都の演技が光る、ちょっと変わった「邦画では珍しい意欲作」。

2020年12月18日
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誰もが脳内にもう一人の自分がいて、自問自答をし会話をしていると思いますが、本作では、それを「見える化」しています。
「ひとりきりの生活」に慣れきっている主役の「31歳の黒田みつ子」をのんが演じています。
かなり情緒が不安定な演技も含めてとても良かったです。
「取引先の若手営業マン・多田」を演じる林遣都もどんどん良い役者になっています。ちなみに、本作では、(これまでは一度も感じたことが無かったのですが)立ち振る舞いや話し方も阿部寛と似ていると感じました。
本作は、敢えて分類すると、「前半」「中盤」「後半」と3つのパートに分かれています。
「前半」の私生活や会社などのシーンは、テンポや初々しい感じもよく私は特に気に入っています。
このまま進んでいくとかなり期待できるな、と思っていたら、「中盤」で舞台が海外に移ります。
ここで作風が一転して変わります。
そして「後半」は、「前半」に近い作風に戻りますが、会社関連のシーンは変わらず良かったです。
ただ、ラストのほうは、ちゃんと考察すると「どこからどこまでが夢なんだろうか?」と区別がつきにくい演出に少し違和感を…。「私をくいとめて」というタイトルの意味は分かりましたが、夢の中の夢【「インセプション」的な?】である可能性もあって、ここはもう少しシンプルな方が良かったかな、と思いました。
個人的には、「前半」のノリでそのまま突っ走ってもらえたら、もっと評価は高かったので、その点が若干のマイナス要素です。(ラストの鍵の仕込みも、本当に必要だったのか判断が難しいところです)
とは言え、のんと林遣都の演技が光る意欲作であり、見て損はないと思います。

追記
公開前は非公開情報だった、心の声「A」の中村倫也は、女性の声も上手いので隠れた名演でした。

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細野真宏