新しい街 ヴィル・ヌーヴのレビュー・感想・評価
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あの鐘を鳴らすのは・・・
1995年のケベック州独立運動。カナダの少数派フランス語圏であるケベック州が英語圏からの独立を図ろうと住民投票が行われていた。アル中のジョゼフが別れた妻エマに何度も電話をして思い出の地であるヴィル・ヌーヴに呼び出してからの顛末を描いた物語。
夫婦ともに詩人であることがわかるが、美しいフランス語の韻を踏まない散文詩を作っている。絵は水彩画というより水墨画のモノクロアニメ。ところどころ、その水墨画の雰囲気も作画技術を変えているようで、ペン画のタッチ、反転させた映像、透明化して重ね合わせた映像などで自由そのものを描いているかのようだった。
家が燃えるという悪夢、そして海の中で戯れる様子、暴動や交通渋滞をかき分けて進むクライマックスなど、抽象的ながらも多才な技法により感覚に訴えてくる作品でした。好きなのはバンド演奏。フリージャズっぽい演奏も良かったけど、ドラムと電子楽器テルミンとのコラボに笑ってしまいそうになった・・・
尚、住民投票の結果は現実と違った結果となり、不思議ワールド感を出していました。たしかにケベックは独立国じゃない・・・
抽象的表現を多用した激シブアニメ映画
枚数にしてわずか10ページ程度の原作短編を、よくもまぁ上手く脚色したなぁというのが第一の感想。原作は、元妻とよりを戻そうとするアル中な男の未練と挫折に終始しているが、アニメ化した本作は、カナダ・ケベック州の独立運動を盛り込み、挫折からの再起を図ろうという建設的な締めくくりにしている。
作画は墨絵を使って描かれており、なおかつ一見では理解し辛い抽象的な表現がやたら多い。とにかく全編にわたりシブさあふれる作りなので、ドラマチックな喜怒哀楽要素を求める人には合わないかも。
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