「これはホラー映画である。」おとなの事情 スマホをのぞいたら 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
これはホラー映画である。
僕のレビューを一度でもご覧になった方ならばお分かりかと思うが、今回は私情全開で行く。
「パートナーの財布と携帯の中身を見ることなかれ」
これは、ギリシャ時代の有名な哲学者スマンワルカッタの名言である。
かつて、僕が嫁さんの植民地時代(俗に言う結婚)だった頃、朝仕事に出かけてはたと気付いた。
「しまった財布忘れた」
思い当たる節が色々ある中仕事が手につかず、ようやく仕事から帰宅して、リビングに戻ったものの、テーブルの上に整然と並べられたカードを見つけ、続け様に、
「全部調べたわ」
の嫁さんの一言が稲妻のように突き刺さり、僕はそのままフライング土下座。
これが後世に語り継がれる「ラブホのポイントカードでロイヤルストレートフラッシュ事件」である。
それから数年後、僕は贔屓にして頂いている人妻のMさんとベッドで歓談中にスマホに通知。
「誰今の?」
急に表情が豹変するMさん。
「嘘、携帯見せて」
渋々差し出す当時の僕の心境はまさにこの映画に描かれていたそのもの。
そこから手当たり次第に女性らしいアドレスを削除されて、僕の電話帳は親族とMさんのみに。
幾多の修羅場を乗り越えてきた僕にとって、この映画はホラー映画だ。
冒頭のスマホ展示会開催の渋々加減。
良い雰囲気である。
それぞれがあらかた予想通りの裏事情で進んでいき、それぞれの内情を吐露する。
人間博覧会と豹変する。
ゲイのカミングアウトの話もよく出来てると思うし、冴えない中年が冴えないエロ女に引っかかるのもリアルで良い。
そして、ノーパン常盤貴子。
良い。
ラブホ鈴木保奈美も、
良い。
個人的に性癖に刺さっていた2人がいい役どころでそれぞれの悩みもリアルに有りそうで自然な演技でとても良い。
僕は、娘の妊娠報告を受けた父親は近親相姦してたものだと思ったのだが、それは僕の心が汚れ過ぎていただけで、思い過ごしてホッとした。
ただね、台風とコンビーフの要素がちょっと薄い。
アイスクリーム食べた後にコンビーフじゃないだろ。
コンビーフは前菜です。
そこだけは納得いかなかったし、もうちょっと捻りがあっても良いと思う。
そんなこの映画だけど、今の時期に夫婦の繋がりを再確認するには良い映画だと思うし、2時間と言う枠に上手くまとまっているし、この濃い密室劇はさながらレザボア・ドッグスだし、下北沢あたりの芝居小屋で芝居として観てる感じで良い映画だった。
重ねて言うが、これはホラー映画である。
p.s. 僕はこの映画を人妻になった元カノと観にいきました。今年もよろしくお願い致します。