劇場公開日 2020年7月31日

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「恋に生きたかもしれないが、愛を生きることはなかった男の物語」カサノバ 最期の恋 mamamichanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0恋に生きたかもしれないが、愛を生きることはなかった男の物語

2021年11月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

見終わった後、もんもんとする映画だ。
何がもんもんとするのかと考えると、カサノバにどうしても感情移入できないところだ。
この映画には、質の悪い娼婦に「人生の黄昏を無理やり押し付けられたような」振られ方をした悲惨なカサノバの最後が描かれていると捉えることもできるが、
このような結末を避けるべく、彼に打てる手段があり、その可能性があることも、ちゃんとこの映画には描かれている。
それは何かと言うと、当時の女性の社会的境遇だ。一見華やかに見えても、借金まみれで困り果てて彼に悩みを打ち明ける昔の恋人の歌姫。彼が虜になる娼婦も、娘を食い物にしている母親に殴られた後、彼の元にやってくるではないか。
しかし、カサノバは何もしようとしないし、娼婦には「愛していない」と冷たく遇らう。
恋の紋切り型を超えて、その人間を愛するために、自分を投げ出すことなく、これまで生きてきて、同じようにそうして生きているカサノバ。彼は自分が次々花から花へと飛び回ってきたと考えているかもしれないが、一つの花を深く知ることができなかったゆえに、そのように生きることしかできなかったのだ。
帽子屋で再会した娼婦は、彼に対して復讐を企んでいたのだと思う。
そして覚めることのない彼の目には、目前で話を聞いてくれる若い娘の輝くような美しさすら感知されていないのだ。

mamamichan