「うまくまとめられている佳作」夏への扉 キミのいる未来へ すみれ7878さんの映画レビュー(感想・評価)
うまくまとめられている佳作
この映画は大きく言うと2つの優れたアイデアプロットでできている。
まず第一のアイデアは、未来へはコールドスリープで、過去へはタイムマシンで行くというもので、これによって主人公は1995年-2025年-1995年-2025年と時間移動する。
第2のアイデアは物語が複雑化することを避ける工夫である。
物語は過去(1995年)と未来(2025年)にまたがっている。この映画での1995年は現実世界の1995年とは異なりコールドスリープ技術が確立されている。企みによってコールドスリープさせられ、2025年に目覚めた主人公は、状況に導かれるようにタイムマシンで過去(1995年)に戻るが、過去で自分を直接的に助けたりはしない。自分が行く未来への種をまくだけ。未来での活動を4日間、過去に戻っている期間も10日間と最小限にとどめることでタイムリープものによく起きる因果関係の複雑さを巧みに避けている。10日間でやるべきことを終えた主人公はコールドスリープで2025年に再び行きつく。1995年時点では宗一郎は二人いて、どちらもコールドスリープするというのがミソ。
1995年での協力者・佐藤に対する描写は不足していると思う。未来からもたらした情報、たとえば奥さんの病気が治せるようになるとか、ピートによる説明部分とか、もう少し丁寧であってほしい。単に善人だからという理由で宗一郎を助けてくれるのはちょっと納得感に欠けると思う。
1956年に書かれたという原作ではどうなっているのか、読んでみたいと思った。