マイ・バッハ 不屈のピアニストのレビュー・感想・評価
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端正な演奏と裏腹の軽率な“やらかし”の描写はラテン気質ゆえか
「20世紀最高のバッハの演奏家」と聞くとグレン・グールドを思い浮かべる人も多そうだが、それは置いといて。ジョアン・カルロス・マルティンス本人の音源が使用された演奏シーンは、超絶技巧から優美なタッチまで多彩なピアノ音楽の魅力を的確に描写し、彼の端正なピアニズムを効果的に伝える。
ただし存命中の偉人の伝記映画にしては「この話ぶっちゃけていいの?」と驚かされる“やらかし”がいくつか。娼館で初体験、数日入り浸って公演に遅れそうに。ひいきのサッカークラブが公園でボール回ししているのに飛び入りして最初の大怪我。バッハ全ピアノ曲収録中の外国の街で見知らぬ女に誘われ付いて行き夜道で強盗に襲われまた大怪我…。もっと慎重な性格なら経歴も随分違ったかもと思わせる。本人も監督もブラジル人なので、ラテン気質ゆえの大らかさか。何にせよ、単なる苦労話やお涙頂戴に仕立てず、お調子者っぽい側面も率直に描いた点は潔い。
浪花恋しぐれだよ♥
3年前に有楽町で見た。バックグラウンドで流れる音楽が、JAZZ、ボサノヴァ、ロックだったのは覚えていたが、伝記映画の領域で見ていた。だから、印象にも余り残らなかった。
(伝記映画なんて持ち上げ映画だからね。)
そして、
その後、この映画は、僕の記憶の恩讐の彼方になっていた。長い事、グレン・グールドの伝記と思っていたのだ。本日鑑賞してそれが間違いだと知った。
『芸術への執着は破滅的な探究』と彼が言うと
『破滅的な探究は性的衝動である』とカルメンは返す。
言い換えれば、『芸のためなら生活は二の次や』なのである。それは自由。しかし、彼の世界は浪花節の世界なのである。
グレン・グールドの生涯の映画でない事が分かって良かった。
しかし、googleレンズでは、『グレン・グールド』と判断する。つまり、彼はグレン・グールドをリスペクトしているのだろう。彼が少なくともグレン・グールドよりも優れているとかは思えない。また、ブラジル人としてのとアイデンティティが彼の行動を語っているとも思えない。あくまでも、彼個人の性的嗜好と見るべきだと思う。また、本当に凄い演奏家なのかは、僕は演奏出来ないので、判断でできない。
まぁ、グレン・グールド見たくハミングしないから良いとは思うが。
兎も角、僕はこの映画を再見して『バグダッド・カフェ』の黒人青年の姿を思い出した。芸術的な力量はこの映画の主人公の方が高いと思うが、邦題『マイ・バッハ』と『バッハを所有する』となれば、『バグダッド・カフェ』の黒人青年のほうがバッハに対する愛はあったと感じた。
医者はそうは言ってない
映画「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」(マウロ・リマ監督)から。
作品冒頭に流される「芸術は痛みによってのみ完成される」というフレーズが
最後の最後まで、貫いていて、期待を裏切らなかった。
これだけの才能がありながら、無茶なことをして怪我をするのは、惜しい、
そう思った視聴者も多かったに違いない。
「新しい習慣は細い線に似ている。だが繰り返す度に線は濃くなる。
それが束ねられて太いケーブルになると、
我々の思考や行動にその習慣が深く染み込む」
それをピアニストとして実践し、大きな成果を上げた人生だからこそ、
有名になっても、酒や麻薬に溺れることはなく、
鍵盤を叩く指が大怪我をしても、前向きに捉え、努力を惜しまない。
両手が無理なら、左手だけで・・「左手のためのピアノ協奏曲」に挑戦、
しばらくして左手も使えなくなり、医者に断念を通告され、彼は落ち込む。
しかし、同伴した女性弁護士が、こう励ました。
「二度と音楽ができない」と言われた・・と投げやりな彼に、
「医者はそうは言ってない」とキッパリ。
「じゃあ、何と言った?」と聞き返す彼に、
「ピアノは弾けない、と」(言っただけよ)と、簡潔に答えた。
彼は、音楽を諦めろ、と言ったわけではないことを悟り、
指揮者として、活躍していく・・このストーリーが嬉しかった。
言葉に敏感だった女性弁護士のアドバイスは、彼に光を与えたよなぁ。
芸術とは痛みを伴う
題は英国の作家オスカー・ワイルドの名言を冒頭に用いた。映画の冒頭に流れた言葉であり、映画で切に感じた言葉だったからだ。右手に痛みが伴おうとも、言葉を2分しか話せずとも、白の鍵盤を血で濡らそうとも、ただひたすらにバッハを表現し続ける男、ジョアン・カルロス・マルティンスの生涯を、美しい音楽と共に追った2時間となった。
最初の妻(?)は、「辞書には芸術の追求により周りが見えなくなる。それは強い欲望だ(曖昧)」と言い残しジョアンの元を離れる。だがその後出会ったカルメンが「それは性的欲求と同じだと同じだと、心理学辞書が言っていたわ」と話す。この考え方の置換に魅了された。
私が言葉を重んじるように、彼らは言葉ではなく音符を、そして静寂を重んじる。静寂を大事にしろと若かりし頃のジョアンに話すレッスンの男性も素敵だと思えた。私も言葉と同様、静寂も大事にしたい。音楽に嗜みたい。強く思うことができた。
冒頭に述べたワイルドの言葉について。私は今のところ、創作を「楽し」んでいる。決して「痛い」と感じたことはない。音楽を嗜む彼らはきっと、痛いけれど、それでも気持ちがよい。否、それが自慰行為のようなものなのだろう。ランナーズハイと似たものだろう。私も時々貪るように文章を書くときがある。常にその域に達したら、どれだれ気持ちがよいのだろうか。
翻訳について。恐らくジョアンたちの公用語はポルトガル語だ。だからその部分は曖昧だが、英語翻訳について疑問を覚えた。翻訳には難しいのかもしれないが、日本語に訳すると、英語本来の美しさが霞んでしまうように思う。いつかそれを感じない作品に出会いたいものだ。私自身も翻訳に少し興味があるので、窓を叩いてみてもいいのかもしれない。
基本的に私は、数多のことを考えながら生きているし、物語を嗜む。しかしこれは音楽映画ということや、言語が日本語や英語ではないことも相まって若干のミステリアスを孕むからか、無心で見入っていた。ジョアンの激情からバッハやピアノに思いを馳せる二時間、大変貴重なものとなった。
「邦題」 がしっくりくる作品なのかも、と感じました。ピアノ演奏にひたむきに向かい合った一人のピアニストの物語です。
タイトルを見たとき「バッハの伝記映画か」と勘違い。
バッハの曲なら全て、譜面無しで演奏できる人の話だと分かり
ブラジルの映画ということも知り、興味がわいて鑑賞。
音楽を聴くのは好きなのですが
私自身、楽器の演奏は全く出来ません。 えっへん
なので、
「両手が別々の動きでピアノを演奏できる」
という人はそれだけで
尊敬の対象です。
そんな私にとっては
主人公のピアノを弾く指の動きの速さには
ただ驚くばかり。
メトロノームの刻むもっとも速いリズム
(なのかな?)に合わせ
超高速で鍵盤を叩く姿をみて
「盤上の筋肉体操」
「ピアノ演奏とは、かくも魂の荒ぶるものだったか」
と
息が詰まりそうでした。
◇
孤高の天才の生涯を描いたお話
なのかと、最初は思っていたのですが
少年時代も
大人になってからも
理解してくれる人が側にいました。
音楽家としては障害と戦いながらの人生ながら
そう捨てたものでも無かったようです。
(ただ、間男はダメでしょ )
◇余談
バッハ
音楽の授業で出てくるので
名前だけは知っていたものの、どんな曲が有名なのか
全く知りませんでした。
ネットでバッハの曲を聴きながら
レビューを書いていたのですが
息が詰まるような曲ばかりではなさそうです ほっ
「ネコ踏んじゃった」
この曲だけはピアノで弾けるというヒト
多くないですか?
(私もそうなのですが…)
簡単だから、という理由だけなのでしょうか ?
…
謎です
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
サントラ盤があればよかった!
子供の頃は内気ないじめられっ子タイプ。そのまま大人になったなと思って観てたら意外と女ったらしな面があり…
子供の頃から見てたけど、どこにそんな要素を持ってたんだ!?
コンサート始まっちゃうよ~
3日間ものあいだ練習しなかったとは、才能はあると思うけど、凄い自信だね!
ふむ…サッカー?
ピアニストって手を守るためスポーツは自粛するものだと思っていましたよ。
でも…好きに生きたいよね、分かる気がする。そうでないと貴方じゃない。
血みどろの鍵盤、窓を開けて地域住民に聴かせる練習、のエピソードが心に染みた。
エンドロールの本人映像は泣いた。パンフレットとサントラを買って帰ろう!と決心が固まっていたのに、無いみたいですね。
サントラじゃなくとも、ジョアンのピアノのバッハを買えば良いのでしょうけど。。
【若き時に、バッハ全曲を暗譜していたジョアン・C・マルティンスの波乱万丈、不撓不屈な人生を描いた作品。】
ー幼少時のジョアンは、既に女性ピアノ教師も”私を超えた・・”と口にするほどの、ピアノの腕を持ち、僅か20歳でカーネギーホールで、デビューするという神童であった。-
■印象的なシーン
・ジョアンが初コンサートで他国に赴いた際に、タクシーで向かったのは娼館。しかも、彼は未経験でありながら、複数の娼婦と朝まで関係を持つシーン。
ーガラガラと彼のピアノの神童というイメージが崩れ去る。だが、このシーンで彼の豪胆さと、並の事ではヘコタレナイ後年の彼の姿が暗示されている。ー
・ジョアンの奔放な性格とヒナステラの難解な曲を弾きこなすギャップ。そして著名なピアニストが”4週間しかないから、ヒナステラは無理だ・・”と演奏を拒否する中、”未だ3週間あるじゃないか‥”と、意に介しないジョアンの言葉。
ー相当な自信家であり、口だけではない事が分かるシーンの数々。-
・女性好きの一面。女弁護士の口説き方・・。
ー勉強になるなあ・・。-
・だが、ブラジル出身の彼は当然サッカー好きで、サッカーで遊んでいる際に右肘の神経を痛め、右手の動きに支障が出るようになる。が、彼は諦めない・・。
・が、更に彼を苦しめる事になる事件が・・。
<才能溢れるピアニストが経験した、数々の困難。けれど、彼はそれを音楽を”バッハ”を愛するがゆえに克服していく。
その、不撓不屈の姿に勇気を貰った作品。後年、バッハの曲を指揮する彼の姿や最早機能しない右手をも使い、ピアノを演奏するシーンには、心打たれた作品。>
ジョアンの音楽を楽しむには◎
ジョアンの人生の一部を描いた作品。輝かしい実績が多い彼だが、この作品においては彼が不慮な事故でハンディを背負うことになったシーンなど負の部分にスポットを当てて描かれた作品。
彼のことを詳しく知っているわけではないが、比較的ポプュラーに知られている事がかなり描かれているため映画作品としては個人的には物足りなさを感じた。
あまり伝記物として期待して見てしまうと違ったのかなというのが率直な感想。
劇中ではジョアンが実際に演奏した曲が使われてるいるためその辺りを楽しむには最適か。
以前イーストウッドがジョアンを作品にする、したいみたいな記事を目にしたことがあるがまた別で制作されているのかな。別であるならもっとジョアンの活躍する、輝かしい姿を追求した作品もまた観たいものである。
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