マイ・バッハ 不屈のピアニストのレビュー・感想・評価
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神様の気まぐれ⁈
昔のことなので出典が定かでないのですが、モーツァルト(バッハでなくてすみません)の音楽について、こんな風に表現されていたのを読んだような記憶があります。
モーツァルトが作曲したのではなく、彼だけが、神の作った旋律を見つけることができたのだ。
嘘だと思うなら、モーツァルトのピアノ協奏曲20番台を聴いてみるがいい。
当時も今も〝絶対音痴〟で、音楽関係は謙遜抜きで本当に疎い私ですが、実際に聴いてみました。
うまく言えないのですが、直接〝琴線〟に触れてくるように染み通ってくるものがありました(音楽音痴の私には琴線なんてちょっと矛盾した例えになりますが)。
野球の神様とか勝利の女神、というように、スポーツの世界にはたくさんの神様がおられます。他にも市場の神様とか相場の神様とか、ややいかがわしい世界にもたまに神様が登場しますが、あくまでも比喩的な使い方です。
しかしながら『音楽の神様』だけは本当にいるんじゃないでしょうか。
バッハもモーツァルトもベートーベンも神の遣わした使徒で、ジョアンのような時折現れる神童も神様の気まぐれのおかげのように思えてきます。
自分が一番縁遠い世界だから、というのもあると思いますが、同じ創作の営みであっても、小説や映画などとは違いを感じます。
小説や映画などの物語であれば、どんな感動作でも、とても人間臭さを感じるのに、音楽に圧倒される時の至福や崇高さにはどこか手の届かない神々しさのような感覚があります。演じ手それぞれの個性もその時々の神様の気分の表れでしかないような。
ボヘミアン・ラプソディの時も同じようなことを感じた記憶があります。
『蜜蜂と遠雷』がまた見たくなりました。
Brazilがうんだ稀代のRock Star
「アートとは誰かの心に傷をつけること」。社会学者の宮台真司氏はいう。
まさにJoão Carlos Martinsのperformanceは映像と演奏を通して観客の心に傷をつける。
彼の演奏する音楽はクラッシック音楽だが、彼の生きかたはRockだとしかいいようがない。
天才であればあるほど、ちょっとした細部のズレに神経を尖らすもの。彼の場合は度重なる不運(自業自得の感もあるのがご愛嬌)にもかかわらず、不条理と彼に襲いかかるハンデをバネに跳ね返すくらいのperformanceを披露する。暗くなりがちなストーリーを明るく魅力的にみせるのは、彼のキャラクターの魅力。
壮年期のGoldberg-Variationensは若い頃のテクニックバリバリの演奏の勢いはないが、彼が歩んできた人生の重みと想いが指先一本一本に込められ、それはそれでまた違う味わい深さがある。
作品中の演奏はJoão Carlos Martins本人の演奏。今もまだまだご活躍の様子。
命がけで愛する、音楽
20世紀最高のバッハ演奏家のピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスの半生を描いた秀作。
やや観客を選ぶタイプの作品だが、私的に感動した。
音楽を愛してやまない、そして音楽に殉じることさえ厭わないものの、愛し続けることに人生を賭ける努力を追求する主人公に共感する。変人だけど。
2020年公開では、屈指の音楽映画である。
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