「端正な演奏と裏腹の軽率な“やらかし”の描写はラテン気質ゆえか」マイ・バッハ 不屈のピアニスト 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
端正な演奏と裏腹の軽率な“やらかし”の描写はラテン気質ゆえか
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「20世紀最高のバッハの演奏家」と聞くとグレン・グールドを思い浮かべる人も多そうだが、それは置いといて。ジョアン・カルロス・マルティンス本人の音源が使用された演奏シーンは、超絶技巧から優美なタッチまで多彩なピアノ音楽の魅力を的確に描写し、彼の端正なピアニズムを効果的に伝える。
ただし存命中の偉人の伝記映画にしては「この話ぶっちゃけていいの?」と驚かされる“やらかし”がいくつか。娼館で初体験、数日入り浸って公演に遅れそうに。ひいきのサッカークラブが公園でボール回ししているのに飛び入りして最初の大怪我。バッハ全ピアノ曲収録中の外国の街で見知らぬ女に誘われ付いて行き夜道で強盗に襲われまた大怪我…。もっと慎重な性格なら経歴も随分違ったかもと思わせる。本人も監督もブラジル人なので、ラテン気質ゆえの大らかさか。何にせよ、単なる苦労話やお涙頂戴に仕立てず、お調子者っぽい側面も率直に描いた点は潔い。
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