「色彩の表現技法の一つ一つに感嘆せざるを得ない一作。」カラミティ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
色彩の表現技法の一つ一つに感嘆せざるを得ない一作。
シャイエ監督の前作、『ロング・ウェイ・ノース』に続いて、非常に素晴らしいアニメーションと色彩表現が楽しめる作品です。『ロング〜』は極北が主な舞台のため、寒色、特に白が目立ちましたが、本作はそれとは対照的に、鮮やかな色彩に満ち溢れています。それらの色は単に画面を彩るだけでなく、例えば炎のゆらめきや遠近感を表現する手段としても用いられていて、作品全篇がこんな色の使い方があるのか!という驚きに満ちています。
ジェーンは西部開拓時代を代表する人物の一人で、これまで多くの映画に取り上げられてきただけでなく、自叙伝も残しています。ただその内容は虚実入り混じっており、ジェーンが話を「盛る」性格だったことを伺わせます(作中にもそんな描写があります)。だが幼少期についてはほとんど記録が残っていないため、そこにシャイエ監督の想像を膨らませる余地を与えています(バージニアに移動する旅団に彼女の家族が加わっていたこと、母親が旅の早い段階で病没していたことなどは史実)。
自分の生きる道筋を自ら切り開く、強い意志を持ったジェーンを、シャイエ監督は活き活きと描いています。一方でそうした振る舞いがしばしば集団の調和を乱したり、反感や憎悪の対象となる場合も珍しくありません。『ロング・ウェイ・ノース』と同様、シャイエ監督はそうした側面も臆せず描写していますが、本作は前作ほどの極限状態ではないためか、そこまでの緊張感はありませんでした。
パンフレットは、実際のカラミティ・ジェーンの人生や色彩表現の解説など、内容が豊富で読み応えがありました!
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