「BS4Kで鑑賞」スパイの妻 劇場版 スコセッシさんの映画レビュー(感想・評価)
BS4Kで鑑賞
ココ最近、BS4Kでの映画視聴にハマっている。
画質は8Kからのダウンコバートで非常に綺麗である。
時代背景もリアルに作り込まれており見応えがあった。
蒼井優の上品な台詞回しが当時の雰囲気を醸し出していた。
昭和初期の日本は徐々に軍国化していき、戦争反対を唱えれば売国奴扱いされる時代だった。
その中で満州関東軍の細菌部隊、いわゆる731部隊の人体実験や細菌兵器開発を告発しようとすれば、確実に国家反逆罪で死刑となったであろう。
この映画の登場人物は実際の史実では無いフィクションであるが、満州の731部隊の人体実験は事実である。
731部隊が実験を行っていたのは、中国東北部の旧満洲にある秘密研究所。実験材料とされ、亡くなった人は3,000人に上るとも言われている。NHKが収集した国内外の数百点に及ぶ資料から、軍人だけでなく、東大や京大などから集められたエリート医学者たちも、人体実験を主導していた実態が浮かび上がった。専門知識を持った医学者が集められ、組織されたことで、実験が大規模に進められていったのだ。
中国東北部ハルビンの郊外20キロに、今も731部隊の本部跡が残る。部隊は、周囲数キロに及ぶ広大な敷地で極秘に研究を進めていた。四角い3階建てのビルには最先端の研究室が並び、その中央には周囲から見えない形で牢獄が設置され、実験材料とされた人々がとらわれていたという。
このような日本の戦争犯罪を描いた映画は少ない。
当時の情勢からこのような内部告発(ディスクロージャー)を実行できる人間は少なかっただろうが、妻を共犯者にしない為に旦那が一芝居うった所は良かった。
結局、離れていてもより深い絆で結ばれたって事をこの映画は伝えたかったのだろう。
中々の昭和レトロなロマンスであった。
暗い日曜日のような悲劇の時代のロマンスというのは、より深く麗しく輝きを放つのである。
当時のインテリ層から見れば、日本の戦争はいかに無謀でアメリカに勝てる見込みなどない事は誰にも分かっていただろう。
それにファシズムが進んで国民の自由が奪われて日本の未来に希望が持てなかったまさに狂った時代だ。
であれば、民主主義のアメリカに勝ってもらって狂った野望に取り憑かれた日本を健全な民主国家にするという使命を実行した事は、長い目でみれば我が国にとっては大義であったと言えるだろう。
主人公高橋一生は決してスパイなどではなく、国際主義の人道家であり英雄である。
現代で言えば、ロシアに亡命したスノーデンと言えよう。
歴史的事実として言える事は、当時の軍部や政治家が日本を破滅に追い込んでしまったのである。
今の時代も同様に誤った国の方針に従い同調圧力という空気に流され、体制側に媚びへつらう人間や官僚が日本をダメにしていっている。
この国を再生させる為には、真実を語り物の道理を貫く精神を取り戻す必要があるだろう。
狂った時代に飲み込まれるな。