「アイデアは面白い.ラストにもう一捻りあれば!」人数の町 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
アイデアは面白い.ラストにもう一捻りあれば!
2020年。監督・脚本・荒木伸。
第1回木下グループ新人監督賞準グランプリに選ばれて長編初映画化した作品。
簡単な仕事だけで、衣食住が保証されて、セックスも満たされる「謎の町」
理想郷ではないか?
うかうかと惰眠をむさぼり、楽しく過ごせそうに思える。
しかしそこには、自由も夢も希望も、そして個(自分)も、無いのだった。
カード破産したり、ネットカフェ難民になったり、殺人をしたり、夫に虐待されたり・・・
居場所のない人間のユートピア「人数の町」
町というよりは巨大な施設。
ホテル並みの個室と社交場のプール。
ネットに書き込み(誉めるandディスる)をすると餌(食べ物)が、供与される。
部屋番号札を渡す→相手が受け取れば、OKのサイン。
セックスが供与される。
さて主人公の蒼山(中村倫也)は借金取りに暴行を受けている所を、
黄色いツナギの男(チューター=指導員か?)に助けられて、バスに乗り込み
「人数の町」の一員となる。
蒼山はそれなりに「人数の町」を謳歌する。
暫くして妹・緑(立花恵理)と姪のももを探して紅子(石橋静河)が、
「人数の町」に現れる。
ここから、町を脱出を試みる蒼山と紅子の冒険的になるのだけど、
今ひとつ盛り上がらない。スリルがない。
「人数の町」を創った《黒幕は?》
「人数の町」の目的は?
デュード(アイツとかおまえとか・・)と呼ばれ、名前も戸籍も奪われたとき、
人は生きる目的を持つことが可能だろうか?
その恐怖を、もう少し具体化するラストのインパクトが不足している。
惜しい作品だ。
(しかし気付がないだけで、実は私も人数の町の住民なのではないのか?
・・・そんな気にもなるディストピア・ミステリーだった)
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