「シチュエーションフィクションの誕生。」人数の町 mark108helloさんの映画レビュー(感想・評価)
シチュエーションフィクションの誕生。
ソイレント・グリーン、アルファビア、華氏451など、海外には優れたシュチエーションフィクションが以前から作られていたが、不思議と日本では余りストレートに作られたものを見たことがなかったように思う。この作品は非常に戯曲的でシュールでそれでいてすべてのロケをセットに依存することなく、既存の風景の中で実は現実の裏側に極めて一見幸せで翳がなく全てが環境によって管理された、その代わり外を見る事、外と比較すること、外に出ていくことを否定された社会が実にリアルにあるかのように描かれている。それはカルト教団のコロニーでもあり、現実の苦悩から統べてが解放されたかのような描かれ方をした社会でありながら、実は現実の社会からホンのチョットスライドしただけの本物の現実ではないのかと思われるような薄ら寒さを感じさせられたリアリティがあった。この作品には遊びがなく物語性も薄いのでその点が弱点と指摘されそうだが、見る側の興味を最後まで引き付ける最低限の映像の積み重ねでeこれだけのリアリティを描き切った監督の手腕は大変評価できる。
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