「あんなに一緒だったのに…」名も無き世界のエンドロール 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
あんなに一緒だったのに…
今年の1月全くの同時期に公開されたイケメン俳優W主演の何か仕掛けがありそうなサスペンス映画2本。
…と、勝手に括り、どっちがどっちで、誰がどっちに出ているのかさえも混同。
でも、両方見てみたら一目瞭然。
先日見た『さんかく窓の外側は夜』はビミョー、こちらの方がずっと面白かった。
共に複雑な家庭環境で育ったキダとマコト。真面目なキダとドッキリを仕掛けるのが好きなマコト。
小学校の時に似た境遇の転校生ヨッチも加わり、3人は欠けがえのない存在に。
小学生の時から支え合って生きてきたが、二十歳のある日、ヨッチが突然いなくなる…。
オンボロ車修理屋で働くキダとマコト。
そこへ、政治家令嬢で人気トップモデルのリサが車を修理して欲しいといきなり現れる。マコトは彼女に強い関心を抱き、仕事を辞める。
キダは裏社会を通じマコトを探し、再会。マコトはリサを振り向かせる男になる為、死に物狂いで金を稼いでいた。
やがてキダは裏社会の交渉屋として、マコトは悲願の会社経営者としてのし上がり、ある計画を実行に移す。
クリスマス・イヴの日、リサへ仕掛ける壮大なプロポーズ大作戦…!
過去と現在が交錯して展開。
過去パートは青春ストーリータッチ。唯一無二の幸せと、儚さや切なさ纏い。
現在パートはサスペンスタッチ。謎と何か悲しみ纏い。
姿を消したヨッチは何処に…?
プロポーズ大作戦とは…?
そもそも、キダとマコトは何をしようとしているのか…?
あれこれ考え巡らせ、見ていると次第に、正直“真相”はその直前辺りまで分からなかったが、2人の“目的”は早い段階から気付いた。
本作もどんでん返しや仕掛けや伏線ありのサスペンス。1度より2度見た方が面白い。小道具、台詞にワード、視線に感情…それらが2度見た時の方が効いている。
『キサラギ』『ストロベリーナイト』『累 かさね』など、佐藤祐市が本作でも手堅いサスペンス演出を見せる。
単なるイケメン俳優共演に非ず、熱演を見せる。
特に新田真剣佑は過去パートは無邪気、現在パートは悲しみとある感情を秘めた複雑な演技。
岩田剛典もクールとダークと受け身の演技。『去年の冬、きみと別れ』もそうだが、岩田出演のサスペンスはなかなか見応えある。
山田杏奈と中村アンの2人は全く正反対のヒロイン。ま、どっちがどっちなんて言わなくても分かるだろうけど、一方は主人公2人にとっての“ヒロイン”、もう一方はビ○チ! 天晴れなくらいで第2の菜々緒になったり…?
このビ○チのやった事、まるであれではないか。池袋で若い母娘を車で轢き殺しといて、「過失ない」なんて責任逃れしているクソジジィと全く同じ! 全く、上流階級や権力って奴は…。
10年越しの計画。もはや執念と言っていい。
それほど、突き動かすものなのか。
突き動かすものなのだろう。
それほど…。
たった3人の世界。
小さいけど、居心地がいい、幸せな世界。
ある時彼女が言った。
さみしい。
忘れられたくない。
ハッピーエンドでも悲劇でも、2時間で終わる映画を見ると涙が出る。
そんな彼女を、永遠にハッピーエンドが続くこの世界へ…招待したばかりだった。
最後の最後に、マコトが仕掛けた“ドッキリ”。
しかしマコトにしてみれば、10年も待たしてしまった。
この世界では叶わなかった。
あちらの世界で、きっと。
ハッピーなエンドロールをーーー。