「美しき、男の物語」名も無き世界のエンドロール サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
美しき、男の物語
男なら、愛する者のために死にたいと夢想したことがあるだろう。愛する者のために人生を捧げて死にたいと思ったことがあるだろう。この映画はそんな男のロマンを具現化した美しき物語である。
主役は小学生のころからずっと一緒だった三人組(男男女)、のうち二人。大人になった二人はクリスマスイブの夜に『プロポーズ大作戦』を決行する。が、作戦の内容が語られぬまま二人の回想が始まる。回想は三人でいた小学校、中学校、高校時代と二人になった大人時代。
大人になっても変わらぬ友情で結ばれているマコトとキダちゃん。もう一人の彼女、ヨッチはどこへ行ったのか。新しく現れた女、リサにつり合う男になろうと必死でもがくマコトと、そのマコトを献身に支えるキダちゃん。複数の時代をツギハギに紡いでいくこの物語の行く末は?
クリスマスイブの夜ははじめと終わりのみ。合計で30分ほどだろうか。それ以外はすべて回想。しかもその回想の中でもそれぞれが何を考えて何をしようとしているのか中々説明してくれない。説明されるのは二人が愛したヨッチの気持ちのみ。
ヨッチの考えについては話の進行と共に理解が増すのだが、マコトとキダちゃんについてはとことんわからない。
と、回想すべてが終わりかけたところでやっと『プロポーズ大作戦』が始まる。ここから先、ため込まれていたすべてが吐き出されるように明かされる。マコトとキダちゃんの真意。ヨッチがいなくなった理由。
真意を知れば、マコトとキダちゃんに男ぼれしてしまうだろう。愛する者そのもののために己のすべてをなげうつマコト。愛する者の幸せを願って自分を殺してきたキダちゃん。その生きざまを見よ。
愛する者を一時たりとも忘れず、喜ぶ姿だけを思い描いて生きてきた男たちの生きざま。あこがれることはあっても踏み出せない、あの線の向こう側へ行って命を燃やし尽くした男たちの生きざまの美しさよ。
全編のすべてがラストの『プロポーズ大作戦』に結実する構成もまた美しい。中盤はちょっとだれるが、それを補って余りあるラストシーンの高揚感。ぜひ観てほしい。