「よくも悪くも丁寧な伏線」名も無き世界のエンドロール おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
よくも悪くも丁寧な伏線
原作未読ですが、予告とタイトルに興味を覚えて鑑賞してきました。率直な感想としては、爽快感はないけど、満足感は得られたかなといったところです。
ストーリーは、小学生の頃から仲のよかった男女三人(キダ、マコト、ヨッチ)が育んだ友情と愛、そしてその結末を10年越しで描くというものです。ネタバレになりそうなので、こんなふうにふわっとしか書けません。
まずは序盤。この物語の中心となる三人の男女の関係を丁寧に描いていますが、これがややスローテンポで退屈に感じる部分もありました。しかし、三人の境遇とそこから生まれる関係性がとても重要で、作品を貫く大切な伏線になっており、終わってみれば、この序盤がいかに大切だったかということに気づかされます。
その後、キダが裏社会につながる会社に転がり込んだところから、物語が大きく動き出します。ほどなく再会したキダとマコトが進める計画の行方が気になり、目が離せなくなります。その間も、要所要所で三人の思い出のシーンがインサートされ、三人の固い絆を描くとともに、終盤に向けて丁寧に伏線を張っていたのはよかったです。ただ、あまりにもにおわせすぎて、鈍い自分でも後半にはオチが予想できてしまったのは、いささかもったいなかったです。
とはいえ、終盤は伏線を回収しながらテンポよくまとめていたし、ラストも中途半端に終わらせず、やり切った感があったのはよかったです。展開がわかっていても最後まで見届けたいという思いにしっかり応えてくれたので、鑑賞後の満足感は得られました。しかし、エンドロール後のdTVへの持ち越しはいただけません。「あくなき利益追求のエンドロール」はちょっと興ざめ…。
主演の岩田剛典くん、新田真剣佑くんは、高校生役は少々苦しいかなと感じましたが、それ以外は雰囲気たっぷりの演技でした。山田杏奈さんも、二人のイケメンを相手に好演していたと思います。中でも、本作では中村アンさんが実にいい仕事をしています。今まで観た役とは異なる、新たな一面を発見した思いです。
今回は、上映前に舞台挨拶ライブビューイングがありました。キャストや監督の仲のよさから、和やかな現場の雰囲気を察することができ、楽しいひとときでした。ただ、ネタバレを気にしてか、作品に触れる話があまり聞けなかったのは残念でした。舞台挨拶は上映後にして、撮影裏話などが聞けるとさらに楽しめたのになあなんて思いました。