「言葉が上滑りしてしまった」名も無き世界のエンドロール 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
言葉が上滑りしてしまった
無理矢理感がずっと続く。これは小学生時代でこの子の髪の色は取り敢えず不問にしたほうがいいのだなとか、ここは多分中学生時代で、ここは高校時代と見ればいいのだなとか、鑑賞するのに作品に寄せていかねばならない。中村アンのリサが10年経っても見た目が歳を取らないのも、柄本明がヤクザの親玉にしては迫力に欠けるのも、なんとか許容範囲ではある。
しかしストーリーが現実離れしていて、登場人物の誰にも感情移入が出来なかった。つまりは感動しなかったということだ。唯一の救いは、すべての伏線を回収したことである。へえと思いながら鑑賞して、あとには何も残らない。
キダとマコトを演じた主演のふたりはよく頑張ったと思う。岩田剛典は2016年の映画「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」から観ているが、このところ随分演技が上手になった気がする。柄本明と1対1のシーンでも迫力の面で見劣りしなかった。真剣佑あらため新田真剣佑は2016年のテレビドラマ「仰げば尊し」の演技からあまり変わっていないが、あの頃からある程度完成されていたと見るのがいいのかもしれない。
主役ふたりの奮闘のおかげでなんとか作品になったというのが正直な感想である。共通の幼馴染ヨッチの言葉が物語の動機となるのだが、言葉はそれを発する人間によって重味が変わってくる。山田杏奈ではヨッチの言葉の重味を伝えきれなかった。言葉が上滑りしてしまい、おかげでキダとマコトの人生も上滑りしてしまった。
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