「海と空と砂浜の寡黙さが心地よい」おもかげ 惑星さんの映画レビュー(感想・評価)
海と空と砂浜の寡黙さが心地よい
10年前に息子イバンがどうなったのかは描かれない。そのとき元夫がどこで何をしていたのかも描かれない。
ジャンに近づく主人公エレナの気持ちも、ジャンがイバンに似ているということ以外説明されない。エレナ自身どうしたいのか説明できないかもしれない。
物語は、エレナがいまさら元夫と何を話すのかもわからないまま終わる。
説明のかわりに画面にしばしば現れるのは、広角に映し出される海と空と砂浜である。雲の多い空と、時に荒く打ち寄せる波は、見る者に不安定で不穏な印象を与える。
物語の説明をせず、海と空と砂浜を見せる。日々、内容のない饒舌に接してあきあきしている者にとってはその寡黙さが心地よい。
それと、表情を抑制して寡黙なマルタ・ニエトがよい。舞台であるフランスのリゾート地、ヴュー=ブコー=レ=バンの落ち着いた空気感もよい。
コメントする