「独特なミステリアスさに引き込まれる」おもかげ KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
独特なミステリアスさに引き込まれる
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6歳の少年を失ったところから物語は始まる。
主人公のエレナは10年経った今もなお息子を失った事から立ち直ることが出来ず、また息子を失った原因となった元夫の過ちを許すことが出来ずにいた。
現在ビーチで働くエリナだがこれまた息子が失踪した場所(正確にここのビーチではないと思うが)で働く事でなにか心の気休めになっているのか…情報量が少ないためこちらがエレナの心の闇に入っていてしまう。
この辺りのこの作品特有のミステリアスさに引き込まれるのがこの作品の良いところであろう。
そこから海岸で失った息子によく似たジャンと出会う。ここからいわゆる息子の「おもかげ」に心が囚われてしまう。彼を目にし、彼と会話をし、時には共に行動し、そして彼といない時間まで彼の事で心が囚われてしまう。
これは決して恋愛感情ではない。本来息子に注ぎ込むはずだった愛情への高ぶりのように僕には感じた。
ジャンはおそらくエレナに恋愛感情を少なからず抱いてたようにも思えるが、エレナが自分に注ぎたいはずであろう愛情の心の扉を開けるよう優しく接していたようにも思えた。
ただ忘れてはいけないのはジャンは未成年の少年であり、決してエレナが失った息子ではない。
この現実と心囚われたた「おもかげ」の溝を終始ゆっくり丁寧に描かれていたように思えた。
序盤はほんの一瞬ジャンがまさか失った息子なのかなと疑ってしまった瞬間はあったが、早い段階でこの作品はそういう作品ではないというのは気付かさせられる。
その点においては間違った方向で見る事なく非常に見易かった作品のように思える。
心の闇やトラウマといったミステリアスな世界を楽しめる面白い作品であった。
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