劇場公開日 2020年8月16日

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「社会派コメディ」はりぼて おから先生さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0社会派コメディ

2020年9月13日
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めちゃめちゃ面白かったです!福岡での上映を待ちかねていたので、監督の舞台挨拶付の初日に鑑賞してきました。富山市議が14人辞職するドキュメンタリー映画です。製作は地元チューリップテレビ。
富山市は自民党会派で過半数を占めていて、年齢が高い大御所の議員さんが元締めになるなど、地方議会ではよくある光景なのだと思います。その大御所議員の政務活動費の不正利用を追求するための、自宅への突撃取材から展開していきます。架空の領収証コピーを突き付け説明を求めると、「のらりくらり」とかわしながら最終的には逃げ切れるかと思いきや、数日後の記者会見で不正利用を認めて議員辞職をすることに。

大御所議員の辞職をきっかけに次から「出るわ出るわ」。

突撃取材→すっとぼける→謝罪会見
突撃取材→すっとぼける→謝罪会見
突撃取材→すっとぼける→謝罪会見

テンポ良く編集されているだけではなく、全体的な編集がコメディタッチになっていて、音楽もコミカル。ナレーターがドラマ「半沢直樹」でナレーションを務めている方なので、社会派の硬派ドキュメンタリーというよりは、本当にドキュメンタリー?と疑ってしまうほどのエンタメ感満載の映画になっています。

なので途中から「突撃取材→すっとぼける」という展開があると、頭の中で「謝罪でしょ?」と先回りして勝手に変換してしまっていて映画館から笑いがおこるように。そしてその議員が、期待を裏切らず「謝罪会見」なので、「やっぱり!」と大笑いに。

突撃取材→すっとぼける→謝罪会見
突撃取材→すっとぼける(笑)→謝罪会見(大笑い)
突撃取材(笑)→すっとぼける(大笑)→謝罪会見(ため息)
おじさんが立て続けに謝罪する姿は、同じおじさんとして、最後はだんだん笑えなくもなってきます。一人ひとりは悪い人では無いのが、映像からも伝わってもくるが不思議な感じでした。
そんなこんなで、「はりぼて」の14人の議員がドミノ辞職となります。

しかしそんな中で、議員会館に夜な夜な侵入し、女性職員の机の引き出しを開けたりしながら付きまとう議員だけは異色でした。

この映画は実は奥が深く、メディアが追求して地方議員を辞職に追い込んだというだけではなく、実は製作者である「チューリップテレビ」も「はりぼて」であるという視点も描かれています。ネタバレになるので触れませんが、ラストシーンなども考えさせられると感じました。ただ単に「悪い政治家」を追求するメディアという勧善懲悪的な作品でないという点にも好感が持てます。

本作、地元富山では10月の県知事選に与える影響を勘案し、県知事選終了後の公開になるようです。公開期間が短そうなので、スケジュールあったら是非映画館で!

まさ