「キュリレンコが傷だらけ!」ザ・クーリエ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
キュリレンコが傷だらけ!
『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』がやっと公開されるので、オルガ・キュリレンコ主演の映画でも観てみようかな…と、いうことでね。(関係ないけど)ソフトで鑑賞。
この映画は全く筋が通っていない。
だから、ストーリーを読んではいけない。
「どんでん返し」って言っときゃ何でも許されるものじゃない。…けれど、このラストは、まぁ笑ってしまう。
このどんでん返しの主役であるお粗末な特別捜査官を演じたダーモット・マローニーという俳優、『Crisis 完全犯罪のシナリオ』というサスペンスドラマで犯人グループの首謀者を演じていた。あれも、どんでん返し的な設定の役だった。面白かったのに1シーズンで打ち切られたドラマだ。
キュリレンコ演じる闇社会の運び屋が、成り行きから命を狙われる男を守って戦うはめになり、延々とホテルの駐車場でバトルを繰り広げる物語。相手は屈強なプロたちで、それと渡り合える理由がお決まりの元特殊部隊…。
命を狙われる男は、犯罪組織のボスによる殺人現場の目撃者で、この証人を保護するために裁判所から離れたホテルで証言させ、裁判所にWebで中継する手筈だった。
捜査官たちが警護するホテルの一室にキュリレンコがある荷物を届けることで、この巻き込まれ型サスペンスがスタートする。
ハイウェイを疾走するバイク。どこかに何かを指定時刻までに届けなければならない運び屋であることが、モバイル通話で説明される。
金髪女性捜査官が青年と男性捜査官たちを引き連れて警戒しながらホテルに入る。
裁判所の狭い一室で、判事と検察官と弁護人がモニターに証人が映し出されるのを待っている。
ホテルに荷物が届けられる。
届けられたケースを開けると、ガスらしきものが噴出する。
…このシークエンス、ブライアン・デ・パルマに撮らせればもっとスタイリッシュでスリリングになっただろうなぁ…と思ってしまう〝デ・パルマニア〟だった。
イギリス映画(アメリカ資本)なので、闘いの舞台となる駐車場は、多層階をスロープで昇降する日本の中規模ショッピングセンターによくある形態。アメリカ映画ではあまり見かけないこの構造をうまく活かしたアクションになっている。
息詰まる生身のバトルアクションはなかなかにハードで、工夫が凝らされていて面白い。
傷だらけのキュリレンコが痛々しい。
残念なのは、主演のキュリレンコが色気をほぼ封印して壮絶バトルに徹しているところ。ライダースーツがボディコンシャスではあるが、峰不二子ほどではない。
組織のボスの娘を演じたキャリー・テイラーという女優が代わりにナイスなボディラインを見せつけるのだが、この娘が何かの役に立つわけでもない存在。
組織のボス役はゲーリー・オールドマンなのだが、ほぼ座ったきりの省エネ出演。
悲惨な目にあう証人は、ただ目撃しただけで物的証拠を持っている訳ではなさそうだったが、その証言が有罪の決め手になるのだろうか…だから、ストーリーを読んではいけないって!