「逃げるという過酷な日々」FLEE フリー bikkeさんの映画レビュー(感想・評価)
逃げるという過酷な日々
まだ幼いアミンは父を連行され、アフガニスタンから夜通し歩いて船に乗り込み、嵐で沈没しそうになりながらロシアへ。そして長兄の待つスウェーデンを目指し脱出、一度の失敗を経てついにデンマークへ。言葉にすると数行で終わる物語だが、それは生き延びるためのとても過酷な逃亡で、学者としての成功を収めた今も人生に暗い影を落としていることが告白される。
シンプルなアニメーションで、逃げ続けた人生の重さが淡々と描かれる。生まれた場所によって辛い少年時代を過ごさなければならない、それは世界中で今も続いているのだ。
今ここから抜け出し、自由を求め目指し続ける日々に疲れたアミン。パートナーとこれからの人生を豊かに満たしながら生きることを選択した彼がこれまで得られなかった安らかな時間を過ごす家が、最後のシーンである。
猫とサボテンをかかえて越してきた家は、まだ家具も揃わず、がらんとしている。そして映画のラストに、一瞬だけ実写で描かれる、ベリーが茂る庭に続くシーンがとても美しく、救われる思いだ。
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