「まあ実話ベースだから」アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
まあ実話ベースだから
囚人たちのワークショップとして演劇やって《ゴドーを待ちながら》を上演しようって話なの。
最初の上演までは面白いのね。囚人たちが変わっていく感じもあって。
上演依頼が殺到して、繰り返し公演やるんだけど、そこは退屈。
同じことの繰り返しになっちゃうからね。
囚人たちは屈辱的な全身検査をされたりして「酷い」とは思うんだけど、服役中だからね。
そもそも懲役は、執行権を持ってない者がやったら監禁で犯罪だから。それを課されるってことは、ある程度の人権を奪われることだし、しょうがない部分もあるの。
特に、公演後に酒飲んで、全裸で騒いでいるのは、やりすぎ。自由になりたかったら、懲役を全うしろって話なんだよ。
それで、パリのオデオン座から公演依頼がきて、全裸で騒いで懲罰房に入れられたみんなもなんとか集めて、最終公演になんだよね。
『ラスト20分。感動で、席を立てない』って宣伝も言ってるし、ここでガーンと来るのかと思って観てると、囚人たちが全員脱走すんの。ひでえな。
それで、舞台では、演出家が彼らと《ゴドー》を演じることになった顛末を語って拍手喝采受けて、なんか良い話だなあってことになってんだけど、どうなの。
ひどい話だと思うんだよ。
でも、最後に全員脱走するって、なんかすごいなとも思うの。そこまで築き上げた信頼とか、全部、裏切って逃げるんだよね。
刑務所側も、自由にさせすぎた感はあるの。服役囚だからね。罪を償うために服役してる人たちなの。塀の外の人と全く同じ人権を適用したいなら、そもそも服役させてない。
それでも、人を信じて、裏切られて。でも、演出家と囚人のあいだに何かは残って。それを観てる人たちにも何かが残った。そこが、壮絶で、面白いなと思ったよ。人間って面白いね。