「それぞれの関係性の描き方」旅立つ息子へ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの関係性の描き方
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施設への入所当日に激しく拒んだ自閉症の息子を連れて旅に出た父子の物語。
妻と離婚し、グラフィックデザイナーとしての職も失い、息子のためだけに生きる父親。健気だが、現実はそんなに甘くない。妻とも話し合った上で息子を施設に入所させるという道を選んだのもわかる。でも、息子の予想以上の強い反発を受けてしまう。ここからがこの父子が知人、弟を尋ねていくロードムービー的な展開。結局父が息子に無礼な態度をとった男に暴力をふるって逮捕されることでその逃避行は終わる。切ない。
で、ラストになるのだが、これも地味ながらいい。息子の成長を目の当たりにし、彼の自立する未来を感じさせる前向きなもの。でも父親の戸惑いや喪失感も垣間見えて、奥深いエンディングだった。
地味な映画なんだけど、父子、夫婦、母子、父の兄弟の関係性がきっちり描かれているのがいい。特に父子の関係は、お互いがお互いのことを愛していることが伝わってくる。こういう丁寧な描き方だとあまり大きな展開がなくても退屈しない。
ちなみに作中登場する曲グロリアは好きな曲なので、あんな形でカバーされていることに少しテンションが上がった。あ、そうか。あのシーンでダンスが好きと意思を表現しているところから彼の成長の兆しはあったんだ。じっくりと感動を味わえた映画だ。
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