劇場公開日 2021年1月1日

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「前作とあまりに違いすぎてもはやゾンビ映画ではない。でも・・・」新感染半島 ファイナル・ステージ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0前作とあまりに違いすぎてもはやゾンビ映画ではない。でも・・・

2020年11月1日
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鑑賞方法:映画館

舞台は前作から4年後、韓国は朝鮮半島ごとロックダウンされた世界。韓国から香港に逃げ延びた元軍人のジョンソクに妙な仕事が舞い込む。それは仁川港から韓国に侵入し橋の上に放置されたトラックを3日以内に回収すること。積荷は2000万米ドルの現金で成功報酬はその半分。ジョンソクら4名のチームは難なくトラックを発見するが・・・。

最初に言っておきたいのですが、これは前作『新感染 ファイナル・エクスプレス』とは全く異なるテイストの作品。例えるならば『マッドマックス』と『マッドマックス2』くらい、『エイリアン』と『エイリアン2』くらい、『プレデター』と『プレデター2』くらい違う。すなわち前作を絶賛した人が必ずしも納得する作品ではないです。

最も大きな違いは本作はほぼゾンビ映画の体を成していないこと。恐らくですがこれは意図的にゾンビ映画の一番の肝を敢えて端折って、あるものに置き換えている。この点に納得いかない人が多いと思います。もう一つ、人間ドラマが幾重にも積み重ねられた前作に対して、本作は拍子抜けするくらいに物語がシンプル。言ってみれば世界から隔離されて4年が過ぎ完全に異世界となった朝鮮半島でのサバイバルアクションがこれでもかと強調されている。これはほぼ朝鮮半島版『ドゥームズデイ』もしくはソウル市街版『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で、イモータン・ジョーに相当する民兵組織が変質した631部隊のファン軍曹がその強烈なキャラクターで物語の半分をかっさらっていきます。前作を絶賛する人はこの辺りに強烈な違和感を感じてしまうのではないかと思います。

しかし、本作には上記で一切言及していないあるテーマ、前作になかったサムシングが詰まっていて、それが本作の魅力の全てと言っていいでしょう。それこそがエンドクレジット後の場内に拍手が起こった理由だと思います。それが何かは是非ともご自身で確かめてもらいたいです。要するにこれは私が今年鑑賞した映画でベストワンになる可能性が非常に大きい、すなわち傑作。パンデミックに喘ぐ世界でまさに起こっていることに真正面からNOを叩きつけるクライマックスに吐くぐらい泣きました。

よね