「現実逃避したくなるアイツらに共感」アナザーラウンド kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
現実逃避したくなるアイツらに共感
昔、直属の上司がアルコール依存だった。テンションがやたらと高いときがあったり、ぐったりしてるときがあったり、挙句の果てにはデスクに突っ伏して寝たりして…。治療のために長期入院したりして今も一応働いているけど、あのままだったら死んでただろうな。気が弱いくせに大きく見せようと虚勢を張る人だから余計にお酒に逃げたんだろう。
自分もお酒は好きなので、酔っているときの楽しさや高めのテンション、大きくなる気持ちはわかる。でも、本作のように、お酒の効果を仕事に活用するって発想はなかった。テンション上げる必要もない仕事だからだけど。
血中アルコール濃度を常に上げて、仕事への効率と意欲を引き出せるか?って実験はたしかに面白い。でも、個人的な経験もあって、たどり着く悲惨な結末も少し見えてしまう。
依存症って、肉体的な依存と精神的な依存があって、精神的なものが厄介なんだよな。依存したくなる環境、状況、精神状態が改善されないと何回でも繰り返してしまう。彼らは仕事に活かそうと実験を始めたのだが、お酒に逃げたくなる状況を抱え込んでいたからあんなことになったってことだ。そう考えるとかなりシビアなラストになると思っていた。実際はむしろ前向きな雰囲気さえ感じるラストだった。これって、酒に酔ってるような感じを演出してるだけなのかな。それとも、嫌なことや逃げ出したくなる現実があったとしても、人生はそれ自体が素晴らしいってことを伝えようとしていたのか。後者であってほしい。現実逃避する手段があったっていいじゃないか。気をつけなければいけないのは、飲みすぎないこと習慣化しないことだ。そうやって酒飲みは今日も理由付けや言い訳をしながら酒を飲むのだ。