「ひと夏にして大きすぎる経験、台風のような衝動を16歳で浴びる」Summer of 85 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ひと夏にして大きすぎる経験、台風のような衝動を16歳で浴びる
16歳にして、その台風はあまりにも大きくて甚大な爪痕を残していった。序盤に少し引いてしまって、やや引いて観てしまったが、かなり衝撃は大きい。
フランス映画に少し苦手意識をもっていたのだが、今作はすごくフレッシュで繊細。アレックスはこの6週間で大人よりも感情を知っていく。そのダイナミックさが少しばかり鬼畜な運命さえに感じる。
初めに、ダヴィドの母が服を脱がすシーン。あそこで軽く引いてしまって、やや距離を置いてしまったのだが、こうして考えてみると、父が亡くなってバランスの取れなくなったのだから、アブノーマルな行動に走るのも分からなくはない。それでいて、仲良くなったからといって働けるものか、とも思ってしまった。
とは言え、作品自体は濃密で無駄が一切ない。こうして見渡すといかに純度の高いラブストーリーだったのかと思う。最初に抱いていた、BL的な感情はどこにもなく、寧ろ愛を育んだ二人が男だっただけなのかもしれない。特別に上げることもなく、社会の受けを担うこともない、85年の幕間に同情する。
時代が時代だけに、出てくるクルマも懐かしいものが多く、シトロエンやアウディもまだ角ばっている。ビスタに滲む時代のノスタルジーを感じながら、ビーチに吹く風と痛みを胸に受ける。
少しばかり文化の違いや理解に苦しむ点はあったものの、淀みない真っ直ぐな二人の愛は、スピードの彼方になったに違いない。
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