「【”海の声は、人生は壮大だと言っている・・。”豪華客船ヴァージニアン号の2000人の乗客を、類稀なるピアノで魅了し続けた男の物語】」海の上のピアニスト イタリア完全版 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”海の声は、人生は壮大だと言っている・・。”豪華客船ヴァージニアン号の2000人の乗客を、類稀なるピアノで魅了し続けた男の物語】
■物語は、第二次世界大戦後、マックス(プルイット・テイラー・ヴィンス)が愛用していたトランペットを古楽器商店に売りに来るところから始まる。
彼は、”トランペットをもう一度だけ吹かせてくれ”と店主に頼み、その曲を聴いた店主が古いLP盤を出してきて”これと、同じ曲じゃないか?”とマックスに話しかける・・。
■印象 <Caution! 内容に触れています>
1.ヴァージニアン号の一等客船のグランドピアノの上に置かれた籠の中には、男の赤ちゃんが・・。周囲から愛された彼は、”ダニー・ブートマン・T・Dレモン 1900"と名付けられる。
ー 船の中で働く人々の”1900”に対する温かい接し方。取り分け、育ての親のダニー・ブートマンの姿。-
2.成長した、2000(ナインティーン・ハンドレッド)(ティム・ロス)が大しけで船酔いしたマックスと、床の上を滑るピアノを平気な顔で、巧みに演奏するシーン。
- ”海とのダンス”を楽しむ2000の嬉しそうな顔。ー
3.ジャズの発明者と名乗るジェリーと”ナインティーン・ハンドレッド”とのピアノ合戦のシーン。
・一曲目は、”ナインティーン・ハンドレッド”は”きよしこの夜”をゆっくりと弾き
・二曲目は、ジェリーの演奏した曲をそのまま弾き(これだけでも凄いのだが、観客からはブーイング)
・三曲目は、ジェリーが”ちびるなよ”と、捨て台詞を吐き、早弾き。”
ナインティーン・ハンドレッド”は”覚悟しやがれ”と言い、火のついていない煙草をピアノに乗せ、更に即興の”4本腕”での早弾きを披露する。
熱せられたピアノの弦で、煙草に火をつけ、ジェリーに加えさせる”ナインティーン・ハンドレッド”。
- 特に印象的なシーンの一つである。-
4.”ナインティーン・ハンドレッド”は、頼まれて初めてレコード録音をしている時に見た美しい女性に惹かれ・・・。
そして、彼女に会いに初めて陸に下りるシーン。
タラップを途中まで下りるが、”遠くを見つめ”被っていた帽子を投げ、再び船に戻る・・。
- ”ナインティーン・ハンドレッド”は、遠くに何を見たのか・・。それはこの映画の再後半に、彼が自ら語る。-
5.戦時中、”ナインティーン・ハンドレッド”の行方は知れず、豪華客船だったヴァージニアン号も朽ち果て、爆破されることになり・・。
<”ナインティーン・ハンドレッド”は、何故、船に居続けたのだろう。それは、きっと陸よりも船上の方が、彼に取って、全てが分かる安全地帯であったからであろう。
陸では、第二次世界大戦が起こり(劇中では、直接は描かれない。)、人々が疲弊し、困窮していく中、海の上だけは、ヴァージニアン号の中だけは、彼に取っての安全で、心休まる場所であったからであろう。
最後の、爆破のシーンは切ないが、”ナインティーン・ハンドレッド”の”遠くに何があるか見えない、分からない処では生きない・・という、彼の生き様”を示していると思う。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督は、そんな事が言いたかったのではないかな・・、と勝手に推測した作品。
重厚で、見応えある作品である。>