「エンタメでも覇権を目指す中国」白蛇:縁起 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメでも覇権を目指す中国
正直、今までフルCGアニメーションを見てこんなにも映像に感銘を受けるほどの体験を味わったことがない。いったい制作費にいくらかけてるのだろうか。もはやディズニー作品を圧倒的に凌駕していると言えるそのクオリティー。
髪の毛の一本一本から衣服の繊維一本一本まで、その質感の再現度合い、透き通るような人肌の美しさ、そしてそれに負けない背景の美しさ。
これはもはや技術だけでなせる技ではない。芸術的センスが大きく要求される領域だ。
どこをどう見ても現時点での世界最高峰のフルCGアニメーションといっても過言ではない。最近鑑賞したディズニーの「ラーヤ」がかすんで見えたほどだ。
またストーリーも感情移入しやすいものになっていて、クライマックスでの主人公たちの別れのシーンなどはタイタニックを彷彿とさせ、作り手の思惑通り思わず涙してしまった。
世界第二位の経済大国である中国が国家プロジェクトに掲げ、国ぐるみでアニメ制作に力を入れているだけのことはある。こんな覇権なら大いに大歓迎だ。
日本では薄給という冷遇に甘んじているアニメーターたちがいまや中国に引き抜かれて活躍しているという現状。人件費の安さから世界の工場と言われた中国はすでに遠い過去のものだ。
日本は貴重な人材の流失に見て見ぬふり。これではクールジャパンの今後も危うい。
予算を国からの支援で賄うため党の検閲というハードルはあるものの、中国の製作者たちには頑張って貰いたい。
「ロシャオヘイセンキ」同様、本作も隠れたメッセージが読み取れる。国民の命を吸い上げ私利私欲に利用しようとする権力者を描いている点など。今後もいくらでも隠れたメッセージを込めることができるだろう。まさにこの点はクリエイターの腕の見せ所だ。中国共産党の検閲を潜り抜けた良作を今後とも期待したい。
2021年8月劇場にて鑑賞。先日劇場鑑賞した「ナタ 魔童の大暴れ」が素晴らしかったので再投稿。