「センスが悪すぎる」白蛇:縁起 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
センスが悪すぎる
高精細かつクリアだが、アートな美しさではない。
物体表面のテクスチャーには見るべきものはなく、深山幽谷においてさえCGにありがちな乾燥した空気感をもつ。
「黄山」に紅葉を貼り付けただけ、みたいな、安っぽい“ハリボテ”の背景にもあきれてしまう。
せっかく中国を舞台にしたアニメなのに、“軟玉”のような、しっとりした深い味わいが感じられなかった。
キャラクターもみな単純すぎる。ディズニー・アニメのようなキャラクターばかりで、うんざりである。
「白蛇」のもつ“魔性”も、単なる物理的なパワーにすぎず、“文学的”な味わいがない。
「はらまき」など、邪魔でしかない。
ストーリーにも深い背景はなく、“ドタバタ”したアクション活劇に終始する。
特に最後の方は、話の展開が急になって、自分には何がどうなっているのか、さっぱり分からなかった。
でもって、何が「500年後」なんだか・・・。取って付けたような変な話だ。
自分が買いかぶりすぎていたのだ。軽いラブシーンはあるものの、本作ははっきりと、“子供向けアニメ”と考えた方が良さそうだ。
そんな中で唯一、光ったキャラが、「宝青坊の主」だった。
“力わざ”だけでない、センスを感じるアニメーションで、ぐっと引き込まれる。
彼女のキセルの吸い口の“玉”には、ゾクッとさせられた。
顔が自在に変化する、奇怪な“眷属”2人も面白い。
これだけの大作だから、制作もかなり“分業制”のはず。彼女の出るシーンだけには、優れたアーティストやアニメーターが参画しているのではないだろうか。
ワーナー・ブラザースとの中国・アメリカ合作ということだが、自分はアメリカ製CG作品にはうんざりしている。
「アナ雪」がバカ売れするくらいだから、観客動員と作品の質とは無関係だと分かっているが、自分はもっと違ったアニメーション世界が観たい。
そういう現状を打破できる数少ない国が、独自の芸術・文化伝統を有する中国だろう。
自分としては、この制作者には全く期待できないので、第2作は観ないと思うが、もっとセンスの良い“中国ならでは”の美しいCG作品の出現には、大いに期待したい。