「生・病・老・死であふれるこの世界で行われている「選別」と今生きている私たちの選択」いのちの停車場 スモーキー石井さんの映画レビュー(感想・評価)
生・病・老・死であふれるこの世界で行われている「選別」と今生きている私たちの選択
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本作は金沢の寂れた診療所から派遣される医療従事者と
その利用者との交流を描いている。
「覚悟」を決めた者たちがいる一方で、どうしても生きたいと「願う」者たちもいる。
「命とはいったい誰のものなのか?」という答えのない問いを突き付ける感慨深く、そして心温まる作品。
特に印象的だった2つのシーン。
いずれも生きるのをあきらめたくなかった患者さんと
あきらめさせたくなかった「医師」のシーンだ。
一つは主人公白石医師ががんで苦しむ昔馴染みの女性を新薬での治療を試みたものの
亡くなってしまったシーンで悲しみに暮れる白石医師に診療所所長仙川がそっと語りかけるシーン。
「新薬が開発されれば、がんの人でも寿命が20年延びるそうです。そんなことになれば日本は全員餓死してしまいます。」
笑えない。だが、この言葉で白石医師は幾ばくか楽になったのではなかろうか。
もう一つは医師国家試験に落ち続けている不器用な野呂青年と小児がんで治る見込みがなくなってしまった少女との交流。
私は世代も性格も彼に似ている(容貌は別として)と感じたため、つい感情移入してしまった。
彼の思いと行動、そして彼女の死を契機に決断した選択は私に勇気を与えるものだった。
この世界は苦しみにあふれている。だからつい「考えてしまう」。
もちろん、そんな時期があってもいいし、そういう時期がないと人間として深みや厚みが出ないと私は考えている。
でも、そんなことばかり考える必要もなくなった。
「誰かの役に立ちたい」
ただ、その思いに従って生きていけばいいのだと。
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