劇場公開日 2021年5月21日

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「 吉永小百合が稀代の大女優で、実年齢からは考えられないほど若く見え...」いのちの停車場 永松義人さんの映画レビュー(感想・評価)

 吉永小百合が稀代の大女優で、実年齢からは考えられないほど若く見え...

2021年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 吉永小百合が稀代の大女優で、実年齢からは考えられないほど若く見える美人であることは、誰もが認めることだろう。
 だが、さすがに40代か50代であろう、しかも救急救命の医師を演じるのは、いくらなんでも無理だ。
 原作も知らないので、見るまでは、どこかの地方都市のおばあちゃん医師の話しだと思っていたら、まったく違った。
 冒頭の交通事故患者を緊急手術するシーンでも、動きが遅い。同年代に比べれば、吉永小百合は元気なのだろうが、緊急をようする手術をしている医者にしては、もはや“よぼよぼ”した感じすら漂ってしまう。
 別に救急救命の医者であった設定でなくても良かっただろう。吉永小百合なら、都会の外科医では、体力的にも限界なので、故郷の診療所にもどった、おばあちゃん先生くらいじゃないと見ておれない。
 さらに故郷の金沢に帰ったところで、「お父さん」がいたことには、あまりにも違和感。「このお父さんはいったい何歳なんだ? 100歳くらいか?」と思ってしまったが、その割には元気だし。
 どうせ無理なら、最初からはっきりと、吉永小百合の設定年齢を明確にしてもらった方が、割り切て見られた。テロップで「救急救命医師・52歳」とかって出してくれれば、諦めもつくのに、設定年齢について、まったく触れられないので、ずっと気になってしまった。
 吉永小百合が結婚したかどうかの話題の時も、「学生時代に彼氏はいたけど、その彼が海外留学をしてそれから自然消滅でそのまま独身」みたいな説明のセリフがあった。多分、治療法を相談した相手なのだろうけど。
 思わず「何十年前の話だよ」と突っ込みを入れてしまった。
 吉永小百合本人がどう思っているかは、もちろん不明だが、できれば、はっきりと「あなたは普通じゃ考えられないくらい美しい、おばあさんですよ」と言ってあげたくなってしまった。
 また、終盤のお父さんを安楽死させるかどうかは、必要なのだろうか? 結末は、観客任せで考えてくださいということなんだろうが、それなら序盤から、お父さんの具合が悪くて、ずっと安楽死を望ん板ことにするなら、ともかく、終盤になってから、とってつけたように安楽死がどうのという話をもってこられてもなあ、と言う感じ。
 しかも結論がでていないし。
 西田敏行や松坂桃季、広瀬すずなどの演技は良いのと、人気者なので、とりあえず、色々と命に関することを色々を詰め込んでみましたと言う感じ。
 雰囲気は良いのだけれど、それだけで、生と死という大事なテーマのわりに、終わってみればなんとも中途半端で軽い感じになってしまっている。
 次々に人を看取っていくが、誰か一人の死に際に深くかかわった方が、良かったのではないかな。
 途中までは感動的に見られただけに、景色もいいし、役者さんたちも素晴らしかっただけに、なんとも中途半端な感じで残念な軽い映画だったなあ。

永松義人