「東京の急性期医療を扱う総合病院の救命救急センターで働く救急部門の責...」いのちの停車場 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
東京の急性期医療を扱う総合病院の救命救急センターで働く救急部門の責...
東京の急性期医療を扱う総合病院の救命救急センターで働く救急部門の責任医師・白石咲和子(吉永小百合)。
ある日起こった大事故の救急現場での事案の責任を取り、退職。
実家の金沢に帰郷し、在宅医療を行う「まほろば診療所」で働き始める。
これまでの現場と異なり、在宅医療を希望する患者は様々。
そんな中、歳老いた父(田中泯)は、脳の機能障害からくるアロディニア(異痛症)という他の刺激を痛みとして感じてしまう病気を発してしまう・・・
といった物語で、物語の大半は、在宅医療を受ける様々な患者とのエピソード。
結果的には、エピソードの羅列にしかならず、とってつけたように、父親の死とどのように向き合うかという物語が最後に展開される。
吉永小百合主演最新作、つまり「スター映画」としては致命的な欠点があり、医療物語では患者と医者は、よくてフィフティ・フィフティ。
特に在宅医療の場合は、完治が難しい患者が中心なので、ウェイトは患者側に偏らざるを得ない。
つまり、在宅医を主演に据えた時点で、主演俳優を際立たせるスター映画にするのは難しい。
結果、患者側の描写は浅く、数を増やすしかない。
で、もうひとつ問題があって、医師側は数を増やした患者に対して常に「受け」の芝居をせざるを得ず、演技としての見せ場が少ない。
その結果、完治の見込みのない父親を、医師としてどうするべきか・・・という、在宅医療の問題とは別の問題を潜り込ませなくてはならなくなり、その問題すら解決の糸口は明示できない・・・というジレンマに陥ってしまった。
なので、製作側が本気でスター吉永小百合を使って、在宅医療の問題に切り込もうとしたならば、
1.吉永小百合が在宅医療を受ける側
2.吉永小百合が在宅医療を受ける年老いた夫の伴侶
のどちらかであるのが相応しく、
1.の場合ならば、この映画での、夫・泉谷しげる、妻・松金よね子の妻役でじっくりと演じるか、田中泯の妻で医療について詳しくない妻役で深堀りした方がよかったのではないかと感じました。
そもそも、吉永小百合さんもかなりのお歳なので、総合病院の救命救急センター責任医師というバリバリに動かなくてはいけない役には限界があるように感じました。