「黄金時代なのかも」ロッジ 白い惨劇 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5黄金時代なのかも

2020年7月12日
PCから投稿

モダニズム建築。カメラは構図と長回しを持っていて、そこにドラマがかさなる。スタイリッシュ。

カット毎に、写真のように決まるうつくしい内装と外装。そのカタログのような絵に、ベルイマンのような心象風景が描かれる──と言ってもいいのでは。

シンメトリーだったり、瀟洒な佳景へ、ぐーっと超スローで寄ったり引いたりするとき、えたいの知れない寓意が宿る。

前半はその雰囲気──空気、どうなるのかの疑問が、すごくいい。

またシルバーストーンの自害がリアル。FXをつかっている気配がなくてすばやく頭をのけぞらせてもこんなリアルに撮れるのかどうか・・・後ろへ引っぱったんだろうか、なんかやたら気になる。
しっかしクルーレスのころ、いずれこんなシルバーストーンが見られるとだれが予想したろう。

ただ、子供らが継母をだます、のだまし、と映画が観衆をあざむく、のだまし、が重なってしまって、それが映画ぜんたいを失速させる。

つまり、恐るべき子供たちをえがくのか、カルトの生き残りの継母のたくらみをえがくのか、それとも、もっと大きな仕掛けで、観衆を疑問符にしているのか、わからないまま進むゆえに、ホラー気配が削がれる。ホラー気配が削がれてもいいのだが、とりわけ解決もないので中間部に、意味がなくなる──という感じ。

まさか夢オチじゃないだろうな──と思わせるところもあって、半途あたりのたるみはけっこうあったと感じた。

またJaeden Martellをつかうのなら、もっとフューチャーしてもいいんじゃないだろうか。なんか釈然としない兄だった。だますにしてもだまされるにしても、気配が薄かったと思う。

継母も、もっといろいろあって、狂うならわかるが、抗うつ剤を隠匿されたとはいえ、錯乱の沸点がひくい人になってしまっている。ゆえに結末も、強引なかんじだった。

ただ映画の空気感、カメラ、構図など、かんぜんにふつうのホラーを凌駕している。ホラーうんぬんというわけでもなく、たしかにグッドナイトを撮ったコンビのシンギュラリティはひしひし感じた。

とりわけ、建築のことは無知なんだが冒頭からのコルビュジエ──とはぜんぜん違うのかも知れないが、そういう、なんていうか意匠ある建築物とミニチュアハウスとを、ぐーっと寄る/引くカメラは瞠目だった。アスターの前作と、設定が似ている、とは思う。

しかしなんだ、きょうびの映画界はホラーが牽引している気がする。このコンビ監督もそうだし、アスターとかピールとかミッチェルとかムスキエティとかグダニーノなんかもそうだけど、

ロジェのようなホラー専門家が決めてくること。
ピールアスターミッチェルのような新鋭が続々出ること。
グダニーノやアキンみたいなとくにホラー専てわけでもない才人が決めてくること。

この三つ巴がかさなって、やはりホラーがいちばん面白い──と感じることが多い。のである。

こうしてみるとジャンルでホラーと括るのがすこしばかばかしい。
ベルイマンのような心象風景と前述したが、さいきんの賢人は、むしろホラーにおいて、かつての名匠のような空気を体現しているのであって、ホラーだから安いという見地が、不可能になっている。

つまり、かつて13金系の従来型ホラーだらけのころは、ホラーが安いという見地があったけれど、いまはぜんぜんできないというはなしである。

ミッドサマーみたいな映画体験はめったないわけだし、やっぱアイデアがむげんにある金脈のかんじはやはりホラーなのである。とおもった。

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津次郎