「反社会的過去と過酷な更生の現実」ヤクザと家族 The Family みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
反社会的過去と過酷な更生の現実
従来のヤクザ映画とは一線を画した作品である。あるヤクザ一家の歴史を辿りながら、前半は義理と人情の世界に生きる男達の姿を描いていく。後半は、ヤクザ視点で更生しようと藻掻くヤクザ達の苦悩をリアルに哀切感溢れる展開で描いていく。反社会的な過去を持つ者達の苦悩を赤裸々に描いていく。更生の壁に苦悩する彼らの姿に熱いものが込み上げてくる。但し、前半の抗争描写が後半の更生描写による感動を抑制している感は否めない。
本作の主人公は、柴咲組組員の山本賢治(綾野剛)。彼は、柴咲組組長(舘ひろし)を救った縁でヤクザの世界に足を踏み入れ、次第に頭角を現していく。やがて、対立する組との抗争が激化し、主人公は14年間服役することになる。その後、主人公が社会に復帰した時、反社会的勢力に対する規制が強化され、柴咲組は衰退していた・・・。
前半の血で血を洗う抗争は、舘ひろしを始めとして、強面の演者達がドスの効いた台詞の応酬で凄味がある。勢いがある。綾野剛が迷いのない何かに憑りつかれたような鋭い眼差しと落ち着いた有無を言わせぬ雰囲気で、愚直で義理人情に厚い主人公に成り切っている。
それに対して、主人公の服役後の後半は、反社会的勢力規制強化という時代背景を受け、ヤクザ達の更生の物語に一変する。反社会的勢力にいたという過去を持つ主人公達の過酷で非情な更生の現実を描いていく。主人公達ばかりでなく、周りへの影響も容赦なく描いていく。観るのが切なく辛くなる。
本作は、前半で主人公達の過去、後半で主人公達の更生の厳しい現実を描いている。しかし、前半で過去を見せつけられると、前半の記憶が強烈すぎて、素直に後半の更生物語に浸れず複雑な気持ちになる。
彼らには、こういう過去があります。それでも、更生して生きる権利を認められますか?彼らとその家族の幸福を願えますか?
本作は、犯罪と更生という普遍的テーマに切り込んだ意欲作である。
多くの共感とコメントありがとうございます。
確かに、前半が有るから、素直に更生を応援しにくい面も有りますね。
すばらしき世界との対比もコメントいただいた通りだと思います。
こちらこそ、引き続きよろしくお願いします。