劇場公開日 2021年1月29日

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「この映画はヤクザ映画+家族映画ではなくて、時代の移り変わりみたいなものがテーマだったのかな?と思った。」ヤクザと家族 The Family Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この映画はヤクザ映画+家族映画ではなくて、時代の移り変わりみたいなものがテーマだったのかな?と思った。

2022年1月19日
PCから投稿

すごく感動したり、気持ちがよくなって元気が出るような映画ではないけど、日本映画らしい、破滅の美学というか、ネガティブな方のいい映画だと思う。

最初は普通のヤクザ映画だったので、面白いけど普通のヤクザ映画なのかな?思っていた。

でも後半全く違った映画になって、盛り上がったというか、盛り下がったというか妙な感じだった。

『ヤクザと家族』という題名だから、前半はヤクザの話で、後半は家族の物語にしたかったのかもしれないけど、そうだとしたらうまくいいっていなかったかもしれない。

暴力団が家族ということならちょっと違うような感じだし、他にあまり家族らしい家族は出てこなかった。

だいたいヤクザってそんなに家族を大事にするものなのか疑問だった。

人によるのかもしれないけど、ヤクザは”飲む打つ買う”の三拍子で、家族をないがしろにしていて、ドメスティックバイオレンスのイメージもある。

嫁は逃げ出す寸前で、息子や娘はぐれて、あんなヤクザな父親は知らないということになるというのが定番ではないのかな?

それを時代が変わったとはいえ、後半から急に家族の絆みたいな話にされてもついていけないような感じがしたので、この映画はヤクザ映画+家族映画ではなくて、時代の移り変わりみたいなものがテーマだったのだろうと思った。

画面の横の長さ(幅)がやたら短いのが気になったけど、あれは昭和や平成の初めのころのテレビ画面みたいなサイズで、その頃の人々を見ている感じを出したかったのかもしれない。

確かに昭和から平成の初めの頃までは、戦争ですべての価値観が崩壊したのを引きずっていたせいか、何でもありのやったもん勝ちだったような気がする。

今となっては信じられないようなことが、いろいろまかり通っていた。

ヤクザなどはその最たるもので、昔は職業の一つみたいな感じで、世間にも非合法ながら認められていたような気がする。

それが変わってきたのはこの映画のとおり、平成の後半頃だったと思う。

法律ができて規制が強化されたたこともあったけど、やっぱりヤクザが大手を振って歩いているのはおかしいということになり、付き合っている人も世間的に責められるようないなった。

それにその頃の人って、ヤクザでなくてもかなり暴力的で、世間にバレなければ何をやってもいい、弱いやつ、騙されるやつが悪いんだという考え方の人が多かったような気がする。

今でもそういう人は多いと思うけど、これもネットやSNSの登場で「世間にバレなければ」というところがかなりやりにくくなった。

なんでもかんでもネットに載せられて、悪い面も多いけど、こういう考え方の抑止力にはなっていると思う。

そういう世の中の移り変わりを、ヤクザとその家族を使って表現したかったのであれば、かなり成功しているような気がする。

ちょっと残念だったのは少し笑いがほしかったということ。

前半がフリで、後半がオチと考えれば、かなりいろいろできたはずで、逆にリアルな感じが出たと思う。

もし監督がたけしさんだったら、絶対かなり入っているはずだと思った。

Push6700