「【観客に思考を巡らせる深みのある作品】」パラサイト 半地下の家族 モノクロVer. 3104arataさんの映画レビュー(感想・評価)
【観客に思考を巡らせる深みのある作品】
・第72回カンヌ国際映画祭では韓国映画初のパルム・ドール受賞、第92回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ「作品賞」「監督賞」「脚本賞」「国際長編映画賞」の最多4部門を受賞、という世界的に評価された映画、ということで興味津々で鑑賞させていただきました。
・個人的な印象は、「社会派×哲学的×芸術的」それぞれの側面をもち、そのどこでも観る者が考えさせられる深みのある映画、といった感じでした。ポイントは、ポン・ジュノ監督が、監督兼脚本を担当されたこと、にあると思います。
・そして、鑑賞後に考える「パラサイトの意味って…」、という瞬間が本当に楽しかったです。そういう深みのある映画でした。
[物語・演出]
・本作のポイントは、脚本と監督をポン・ジュノさんが両方行ったことで、おそらく物語を執筆されている時点で映像演出を見据えた流れ、となっていると想像しました。よく映画を観ていると、「これって脚本の時点で指定のあったものなのか、演出の時点で加えられたものなのか」と疑問をもったりすることもありますが、今回はそういう疑問を抱くことも「あ、これ演出(=監督だ)」と即座に思える感覚でした。そして、後でスタッフを確認してみると、脚本兼監督をされてたのことで、バチっとハマりまりました。
・身分の「線引き」を表現したカット割りや、身分の格差を表すための「階段」を使った表現は、「分かり易さ」はありません。しかし、考えることで「もしかして、そういうこと…?」というお宝探しをするような楽しみを観客に抱かせてくれます。その辺が、エンタメ映画とは一線を画す「芸術的」な側面かな、と思いました。
[映像]
・カメラワークでも身分の差を表していましたね。ティルトアップ・ティルトダウンの使い分けも「あえて」されているように感じました。この辺も答え探しをしながら2度目を観るのが楽しみで、より深みのある「芸術的」な作品に見えます。
・同じ空間にあるにもかかわらず、豪邸とその地下室の照明(色合い)も全く異なりました。「足元にある貧困を気づかない富豪たち」をより、色濃く感じさせてくれますね。
[演技・配役]
・息子のギウ(チェ・ウシク)さん、表情が特にお上手。それまで貧乏でもとても明るい表情だったのにもかかわらず、本人迷いが生じたあたりから突如として悲壮感漂う表情に変化。「あれ、大丈夫?」とまるで友達を気遣ってしまうような気持ちにさせてくれる共感性の高い演技でした。
・キム家(貧困層)の家族全員がそれぞれの良さを持っています。お父さんのひょうきんな演技も抜群。
・パク家(富裕層)の家族も、それぞれが能天気である、ことをしっかりと観ているこちらが受け止められる演技でした。
[全体]
・「パラサイト」の意味。私個人としては、富裕層と貧困層、どちらに対してもかけている意味、だと感じました。
・パク家は、お金はあるけれど「他の誰か」に頼らないと生きていけない。「他の誰か」にパラサイトしている。キム家は、才能や知識、生きるはあるけれど「お金を出してくれる誰か」に頼らないと生きていけない。この双方が、お互いにパラサイトしている状態、を描いた映画であり、その結末が、映画の結末そのものである、ということなのかなー、と勝手に推察しました。
・そんな中で、息子のギウ君だけ、最終的に「パラサイトから抜け出す新たな道」を見つけたのだと思います。そんな台詞を発します。しかし、そんな新たな道ですら、実は私のような一般庶民からすると「何言ってんの?普通の事じゃん??」のように見えてしまうところが、いかに現代の社会情勢の中で一定の方々が「思考の牢屋」に閉じ込められてしまっている状態なのか、というところを提示しているように感じました。この辺が「社会派だなぁ」と思わせてくれたところです。
・実際に韓国の現状を肌身で感じて知っているわけではないので、詳細なところまではわかりませんが、少なくとも「韓国の現代社会にメスを入れようとしている監督」の姿勢は受取ることができました(これ、全然監督の意図が違ったらウケますけど笑)。
・総じて、観客にあらゆる視点で思考を巡らせてくれる深みのある映画、だと思いました。AmazonPrimeVideoで500円課金して観賞してよかったな、と思えるコスパの良い作品でした。ありがとうございました。
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