劇場公開日 2020年6月5日

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「それぞれ違う良さがある」パラサイト 半地下の家族 モノクロVer. ニコさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0それぞれ違う良さがある

2020年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 過去に通常バージョン(カラー)鑑賞済み。
 モノクロバージョンは、視覚情報がカラーよりシンプルなせいか、獏とした印象だが落ち着いて観られる感じがあった。そして特に半地下の部屋の暗い猥雑さや、豪邸の地下に通じる階段の入り口の不気味さがより印象深く伝わってきた。夜中に息子が冷蔵庫の前から階段の入り口を見る例のシーンなどは、モノクロだからこそのインパクトを感じた。
 ただ、パク一家の豪邸での華やかな生活の描写は、カラー版の方がその雰囲気が伝わってきたように思えた。半地下の生活との対比として重要なパク家族の生活の眩しさの表現は、カラー版を観た後ではどうしても物足りなさを感じた。
 終盤クライマックスの混沌も、個人的にはカラーの方が鮮烈で好み。
 監督はモノクロ映画に強いリスペクトを持っているためこのバージョンを公開するに至ったそうだ。今回の試みは全く否定しないが、カラー作品をモノクロ変換(もちろんこだわってチューニングしたとのことではあるが)したものでなく、最初からモノクロ公開のみが前提の作品も一度作ってみてほしい(もし既に作っていたらごめんなさい)。
 鑑賞の順番が逆だったらまた印象が違ったかもしれない。モノクロ版を称賛するのが映画通の証左であるかのような風潮(私の妄想でしょうか)と自分の素の感性を隔離するのにも少し気を遣う。こういうバージョン違いはちょっと悩ましい。この悩ましさを楽しめるところが醍醐味かも知れない。

ニコ