哀愁しんでれらのレビュー・感想・評価
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「オッス、おら伏線!」「ぼくは伏線になりたいよ!」
注)エログロサスペンス耐性が、結構強めな人間の感想です。
すごく、実際に有り得そうな話ですよね…
親の再婚で(しかも前妻は曰く付きの事故死)、
心に傷を負い、実は狂っていた娘、
幼少期のトラウマにより、「完璧な父と母」になろうと狂気的なまでに心酔する男女。
3人の、世にも悲しい化学反応。
娘の狂気の根源は、再婚が原因なのか、母親の死か、父親譲りか。
ダークな御伽噺ということで、もはや作り手は娘の理由には目もくれてないのかもしれないですが、そこが気になるんだわたしは!
パラサイトするように、うさんくさい大悟や、序盤で大悟教に入信する家族にわくわくしつつ。
「足のサイズしか知らないのに結婚するなんておかしい」という、友人のシンデレラに関する批評や、
「死体をさわれないなんて愛がない証拠」という、展開を予想させるような大悟の言葉(ここで私は、前妻が元開かずの間にいるのを期待した)、
度々出てくる点滴(プラセボ効果かな?)など、
素敵な描写をガン無視して、
「オッス、おら伏線!」という顔をして立ってたインスリンくんが、最後を掻っ攫ってったのが寂しかったです。
30年も、自分の裸を模写し続けるなんて、なんか伏線として回収されなきゃ、模写の大悟くんたちが泣いてますよ。うさぎの剥製も号泣間違いなしです。
伏線の回収どころを私が見落としてたなら、まじで教えてほしい。
大悟の絵の技術も、趣味以上の理由がないならとても寂しい。
物足りないので私は、大悟があの性格で、これまでの彼女とかにヘマしなかったか妄想して帰ります…そういうスピンオフ絶対ありそう。
お伽話のその先もお伽話だった
西洋でも東洋でもお伽話というものは決して楽しい美しい話だけではない。むしろ救いようのない残酷な話もある。
シンデレラのストーリーのその先を描きたかったという本作。
前半部分に描かれる小春の不幸のオンパレード。全て一日のうちに起きることで展開にスピード感がある。
おまけに「王子様」大悟との出会いまでこの一連の流れに組み込まれる。
不幸の続きかのように思われたが、実は運命の相手とのシンデレラストーリーの序章だった。
プロポーズから入籍までの怒涛の展開、話題のダンスシーンもお伽話感があって面白い。
結婚生活が始まり、不穏な影が少しずつ見え始める。
大悟の部屋に最初は鍵がかかっているのも、すぐには襲ってこないホラー映画の敵のようでいい。
少しだけ残念だったのが、序盤のインスリンの話で伏線が見えたこと。
そして学校の校医として予防接種の話をした段階で「事件」が読めたこと。
だがそれも、くるぞくるぞ、きたー!的なワクワク感として楽しめた。
大悟に罵られ追い出され、だけど最後には迎えに来てくれた。この時点で今作は二回目のめでたしめでたしを迎える。
その後小春と大悟はとんでもない事件を起こすが、その場面はどこか現実から乖離している。
あのまま大悟が校医の立場にいたとは考え難いし、そのまま予防接種が行われるとも考え難い。
ここから先は私の妄想だが、あれは小春の中の、お伽話の一つの結末なのかもしれない。
ヒカリのために、みんな殺しました。めでたしめでたし。
でもヒカリのことを好きなお友達もいました。めでたしめでたし。
家族三人、仲良く暮らしました。めでたしめでたし。
現実かもしれないし、空想かもしれない。
どちらにしろ小春は、めでたしめでたしのその先は考えなかったのかもしれない。
小春の身に起きた不幸な出来事。
その締めくくりに起こった、大悟との出会い。
それは不幸の終わり、幸せの始まりではなくて、やはり不幸の続きだったのかもしれない。
だとしても、出会わなければ良かったと小春は思うだろうか。
大悟を愛さず、愛されず、ヒカリの母にもならなかった人生の方が良かったと思うだろうか。
それはめでたしめでたしのその先にある、小春の人生次第かもしれない。
全ての不幸な出来事すら自分の人生を作るもの、そしてこの人たちに出会えたならと赦せることが、「愛」なのではないかと思う。
この物語はお伽話だ。
お伽話とは本来、残酷で容赦ない、教訓を含んだ物語である。
追記。
パンフレットを読んでから、2回目観賞。
人物の見え方がかなり変わる。
解釈に正解も不正解もないとは思うが、自分の見たもの感じたものを疑うことも大事だな、と。
気になる方はぜひパンフレットを。
作品の美術に関する拘りが満載で、読み物として非常に興味深い。
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