劇場公開日 2020年7月3日

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「こみあげる嫌悪感」アングスト 不安 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0こみあげる嫌悪感

2023年7月17日
PCから投稿

カルトになっていてカメラワーク、Erwin Lederの演技、ナレーション、サウンドトラックなどがプロパーから賞賛されている。
今ではカメラが小型化しブレ補正も進歩しているので身体にくっつけて顔を近接でとらえる体幹と連動するようなカメラはよく見られるが1983年に既にそういうカメラワークを見せていた。

頬が痩けすきっ歯でぎょろ目のErwin Lederに不安をおぼえ、犯行は即物的で人間味がなく、見る者が凶行に加担しているかのようなナレーションがかぶり、暗澹たる気分をもたらす映画に仕上がっている。暴力描写のため長らく上映禁止にされていたそうだ。

個人的にはやはりヨーロッパ製ということにつきる。
しばしば言ったことがある見解だがロジェのマーターズとアメリカのマーターズは別物。クオリティもそうだがクオリティというより暗度と湿度が米欧では天地ほどもちがう。
それはアメリカで再製作したハネケのファニーゲームにも言えるし、ロジェがアメリカへ進出してつくったトールマンにもいえる。アレクサンドルアジャにしてもHaute Tensionとアメリカでの仕事は質感がちがう。
アスターの映画はとても恐ろしいがそれでもやっぱり欧映画とはちがうアメリカ的乾きがある。

Fabrice du WelzのCalvaire(2004)は変態村と邦題されてしまっているのだが、ようするに変態であると定義するほかない退廃と暗渠がヨーロッパにはある。それが上質なホラー素地になるのは言うまでもない。

Imdb7.2、RottenTomatoes100%と73%。
Gerald Kargl監督にはこれ以外のしごとがほとんどないが共同脚本と撮影を担当したZbigniew Rybczyńskiはその後もミュージックビデオやショートなど製作のほかコロンビア大や女子美大など各国で教鞭をとったことがあるそうだ。

大筋を実在した犯罪者とその事件にもとづいている。St. Pölten murdersの項を検索したら事実はもっと酷かった。モデルとなった男は幼いころから虐げられやがて加虐が趣味になり小動物を殺傷するようになり・・・世の殺人鬼成長行程を踏襲している。オーストリアでは死刑が廃止されていることもありいまだ存命だそうだ。

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津次郎