「殺風景な街と異常性や狂気はオーストリア印」アングスト 不安 shunsuke kawaiさんの映画レビュー(感想・評価)
殺風景な街と異常性や狂気はオーストリア印
1983年映画なので、当然フィルムで撮影された映画であり、40年弱の時をえて、お披露目されるにあたりデジタルリマスタリングされているはず。
それでも、映像は全編薄ぼやけたくすんだ粗い感じで、この映画の舞台であるオーストリアの小都市は一面曇りの風景。
街の建物はどこも同じような形と色で古くさびれている。
殺人鬼の主人公がガソリンスタンドでありつく料理はソーセージにマスタードだけ。ドイツやオーストリアの軽食はこんな感じなんだろうが、殺風景な天気と街並みに次いで、食事も味気なく、なんの楽しみもなさそうなオーストリアの街。
さすが、オーストリア。作家トーマス・ベルンハルトを生んだ国。トーマス・ベルンハルトという作家は生まれ育った街(ザルツブルグ)、そこでの生活や文化、家族やそこに住む人について、死ぬほどつまらなく感じ、相当嫌っていて、そのつまらなさについて、ひたすら愚痴と呪いで語り続けた作家である。トーマス・ベルンハルトがなぜそんなに愚痴り呪い続けたか、この映画の曇り空の殺風景な街を観て少しわかるような気がした。
あるいは、オーストリア映画といえば、ミヒャエル・ハネケ。人間の異常な暴力性をしつこく描く作風で有名だが、映画であれ、小説であれ、オーストリアといえば異常性や狂気を売りにするところであり、それは、もはや定番であることが、ベルンハルト、ハネケ、そしてこの映画でみえてくる。
なぜこの映画の主人公が狂っているのか?それは、オーストリア映画だからというのが一つの答えになると思う。
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