オールド・ガードのレビュー・感想・評価
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「紅一点」なんて言葉を叩き潰すセロンのアクション新時代
シャーリーズ・セロンが、完全にアクションモードに入っている。もちろんアクション一辺倒ではないが、自らのプロダクションで『アトミック・ブロンド』を成功させ、続編企画も進行中。そして新たにシリーズ化を目論んでいるのがグラフィックノベルを映画化した本作だ。
セロンが演じるのは、不死の力を持つ傭兵集団のリーダーで、不死の力を狙う巨大製薬会社の陰謀に巻き込まれるという王道のSFストーリーだが、映画のテイストはむしろリアル嗜好のミリタリーアクションで、浮ついた荒唐無稽さは感じない。
そしてセロンは、完全に「女性が本格アクションを披露すること」を特別視しないように心がけている。他の仲間が男性ばかりであることから(途中から女性の新メンバーも加わるが)「紅一点」なんて表現しようものならぶっ飛ばされるに違いない。それくらい、アクションのハードルを上げつつも、「女性もやってのけて当たり前」な時代を作ろうとしてるのがわかる。今後いくらでも展開させられそうな話だけに、ぜひ続編もお願いしたい。
新しい視点
面白いアイデアながらも、凡庸なアクション映画に
【イントロダクション】
不死身となり、数百年を生きる戦士達が、その力を狙う製薬企業との戦いに挑む。
『スーパーマン』『ワンダーウーマン』『ウルヴァリン 』などのアメリカンコミックライター、グレッグ・ルッカによる同名原作(作画:レアンドロ・フェルナンデス)を、オスカー女優シャーリーズ・セロン主演で映像化。
監督はジーナ・プリンス=バイスウッド。脚本・製作総指揮には原作者のグレッグ・ルッカが参加。主演のシャーリーズ・セロンは製作も務めている。
【ストーリー】
歴史の影で活躍してきた不死身の戦士達、アンドロマケ〈アンディ〉(シャーリーズ・セロン)、ブッカー(マティアス・スーナールツ)、ジョー(マーワン・ケンザリ)、ニッキー(ルカ・マリネッリ)は、元CIAのコプリー(キウェテル・イジョフォー)から誘拐事件の人質となった子供達の救出任務を請け負い、南スーダンに向かう。しかし、人質事件はコプリーによるでっちあげであり、真の目的はアンディ達の不死性を映像に収める事だった。
一方、アフガニスタンでは、アメリカ海兵隊員のナイル(キキ・レイン)が、作戦途中でターゲットから反撃を受けて負傷し、死亡する。しかし、彼女もまたアンディ達と同じく不死者として蘇り、軍による実験対象にされようとしていた。不死者は仲間同士夢で繋がる事があり、ナイルの危機を察したアンディは、彼女を基地から拉致し、フランスの隠れ家へと案内する。
コプリーは、製薬企業“メリック”のCEOメリック(ハリー・メリング)にアンディ達の映像を見せ、彼女達を生け捕りにするよう命じられる。しかし、メリックはアンディ達不死者を実験動物としか見なしておらず、自社の利益拡大を目論む残忍な人物だった。
フランスの隠れ家でブッカー達と合流したナイルは、その夜に悪夢を見て魘される。それは、かつて不死者としてアンディと行動を共にし、魔女狩りによって鋼鉄の処女に閉じ込められて海に沈められたクインのものだった。アンディはナイルに「何があっても守る」と約束するが、既にコプリーの放った工作員が隠れ家に迫っていた。
【感想】
シャーリーズ・セロン演じるアンディが魅力的で、同じ依頼主から依頼を受けるのは一度だけ、観光客の自撮りに写った際、撮影に協力するフリをして自分の写った画像を削除するといった、プロとして自分の痕跡を残さないように行動する序盤の姿が良かった。太古から生きている証として、特殊な形の斧を使うのも外連味があって良い。何より、黒髪短髪のシャーリーズ・セロンが、本人のプロポーションもあって抜群にカッコいい。
反面、メインのアイデアである不死者としての描写や苦悩が教科書的で、新鮮味に欠けた。特に、登場人物達の「不死である」事に対する苦痛がイマイチ伝わってこなかった。愛する者を失う苦しみも、自分だけ取り残されていく孤独感も、台詞によるやり取りばかりで説得力に乏しいのだ。せめて、家族の事を心配していたナイルくらいは、ラストで陰ながら母と弟に別れを告げる演出等があっても良かったかもしれない。
ただし、魔女狩りで海に沈められたクインに対する、「絶えず溺れ死んでは蘇りを繰り返させる」という“殺せない相手への最大の苦痛”描写は素晴らしく、ゾッとさせられた。そんな苦痛の中に放り込まれれば、ナイルの言うように狂気に飲まれてしまうのも頷ける。しかし、エンドロール直前のオマケ映像で、100年の追放刑を受けたブッカーの前にアッサリと姿を現す点は拍子抜けした。思ったほど狂っている様子ではなかった(アンディに対する底知れぬ怨みこそ抱えてそうだが)ので。何なら、追放されてまだ半年しか経っていないブッカーの方が辛そうだった。
アクションシーンも、現代ではスローモーションから早回し、スタントなしによる白熱の格闘戦といった、多種多様なアクションの組み立て方がある中で、本作のアクションはそのどれもが凡庸で迫力に欠けていた。アンディの斧によるアクションも、もっと見たかった。
特に、クライマックスのアクションで、不死者達の不死性を存分に活かしたアクションが拝めなかったのはマイナスポイント。人間に戻りつつあるアンディを、皆が盾となりながら敵に向かっていく姿は、その様子を字面で見れば面白く感じられるだろうが、実際は絵的に地味で真面目になり過ぎていた。原作がある作品なのである程度準拠せねばならないのかもしれないが、その原作者が『スーパーマン』等のグレッグ・ルッカだというから、余計にそう感じてしまうのかもしれない。原作者としては、硬派なアクションを描きたかったのかもしれないが、同じような不死者でアメコミ原作としては、既に『デッドプール』シリーズが大成功を収めているだけに、ああした破茶滅茶さに完全に見劣りしてしまっていたと思う。
ただし、要所要所の台詞にはベタだが印象的なものがいくつかあった。
アンディの不死者としての能力が弱り、負傷した傷を手当てする為に立ち寄ったドラッグストアで、アンディの手当てをした店員の言葉が良い。
「人を助けるのに理由は関係ない。今日、私が助けたあなたは、明日、別の誰かを救う。人は孤独じゃない」
また、裏切った事を後悔するブッカーに、アンディが投げかける言葉は、人生の一つの本質だろう。
「死に方は選べないけど、生き方は選べる」
その言葉通り、ブッカーは仲間達から100年の追放を命じられ、自分の生き方について問い直さなければならなくなった。
【不死の正体は、神の意思か、人類という種の意思か】
アンディ達は、誰1人として自分達が何故不死の力を獲得したのか知らず、明確な回答も作中では示されない。
しかし、妻の死後、独自にアンディ達を調査し、追い続けてきたコプリーは、1つの法則を発見していた。それは、「不死者によって救われた者は、その後の人類史において偉大な功績を上げる」というものだ。そして、恐らく過去に不死性を失った者は、そうした人々を救う役割を終えたのだろうという事だ。
もし、アンディ達の不死性が、「人類という種を繁栄させる為、因果関係の順序を超えて偉大な功績を残す者を生かそうとする」という、神のやうな超常的な存在、もしくは人類種全体の意思だと言うならば、納得は出来る。しかし、それは同時に「役に立つ人間だから救わせる」という選民思想にも通じると思うのだ。特別な人間に救われる資格があるのは、同じく特別な才能を持つ人間だけであるという事になる。裏テーマとしてそうした残酷さを描いているのだとすれば、毒のある作品として好感が持てるのだが、恐らくは自分達の行為の意味を見失いつつあるアンディ達を勇気付けるものだと思うので、そこまで深く考えられているとは思えなく、そこが判断として難しいところ。
【総評】
シャーリーズ・セロンの画力が素晴らしく、不死性を獲得したキャラクターという設定も魅力的だった。反面、アメコミ原作らしからぬ硬派なアクション映画に仕上げたかったのかもしれないが、些か地味に纏まり過ぎてしまい、アクション映画としては凡庸な作品に止まってしまっているのが残念。
クインとの因縁がどういった方向に進むのかは気になるので、配信が開始された『2』は観る予定。
写真撮られすぎw
強いんだけど、簡単につかまってしまうし、殺されてしまう。数世紀を...
昔から生きていて歴史の重要な局面に関わって戦ってきた、という、どこ...
惜しい
そこはかとなく感じる惜しさ。
シャーリーズワールド全開!
【次回作品への期待もこめて】
2020年のデータで、売上世界一の製薬企業はスイスのロシュで、2位は同じくスイスのノバルティス、そして、3位がアメリカのメルクだ。
「メリック」って安易な命名ですよね笑
ちなみに、日本勢は、武田が10位。新型コロナウイルス・ワクチンで一段と知られるようになったファイザーは8位でした。
(以下ネタバレ)
まあ、「オールド」でも、製薬企業は、怪しい研究をしているって、それも「老い」だったりする設定は、人にとっては究極の問題なんだと想像する。
エジプトの王が生まれ変わることに重きを置いたのに対して、歴史上、不老不死に一番取り組んだのは、秦の始皇帝で、思いの外、長生きしなかったってのは歴史の皮肉のように思う。
為政者が、長生きしたいと思うのは、権力欲からだと思うけど、為政者であり続けることが、長生きとは必ずしもイコールじゃないんだからと考えてしまうのは、僕だけなのだろうか。
さて、この作品、長期間、不老不死でも、どうしたタイミングか、死が訪れるというのは、これまでになかった設定かなと思う。
人類も誕生や死を繰り返して進化したのだから、理由は不明だが、突然、そんな身体になって、いつかは死が訪れるってのも、巷でありがちな面倒くさい突っ込みがなくて良いように感じる。
進化は享受した上で、一時的に不老不死の身体を獲得する。まあ、それは、正確には不老不死とは呼べないのだけれども。
そして、いつか、傷が治らなくなり息絶える。
結局は、使命を感じながらも、実は孤独な存在で、死の恐怖と戦わなくてはならない。
だから、100年間交流なしってのは、本当に罰だなと思う。
孤独ってのは、家族や仲間が死んで感じることもあるだろうし、会えないってのも同様だなと思う。
首を切り落とされても生きられるのかとか気になるけど、まあ、それは面倒くさい突っ込みってことで......。
アンディの友は、鉄の棺桶に入れられて、海に沈められたんだと思うけど、鉄は簡単に腐食するから、とっくの昔に脱出出来ているはず。
それで、数百年会いに来ないってのも理由があるんだよね。
エンディングの、「ああっ!?」ってところで、続きになるけど、僕は結構面白いと思ったので、是非、次回も制作してほしいと思いました。
そして、今回は、この人たちが集い、悪辣な製薬企業と対峙するって設定だったけど、次回は具体的な社会や世界の危機と対峙するような物語を所望します。
映画館で見たかった。
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