「ニューヨークを愛する想いは感じた」レイニーデイ・イン・ニューヨーク K命さんの映画レビュー(感想・評価)
ニューヨークを愛する想いは感じた
ティモシー・シャラメさん演じるギャッピーとエル・ファニングさん演じるアシュレーのNYでのすれ違いを描きます。
ティモシー・シャラメさんはストーリー・オブ・マイライフでも文化的な高等遊民の役を演じていたが、ギャッピーも現役大学生とはいえ造形はモラトリアムな高等遊民です。彼のパブリックイメージってこういったものなのでしょうか?
アシュレーはアリゾナ出身の田舎娘、エル・ファニングの可愛らしいルックスとマッチしたキャラクターです。田舎から出てきて、都会で浮ついている可愛い娘、都会のイケてる奴に騙されないかという不安をうまい具合に観客に与えてくれます。
NYでのすれ違いを描くというが、そもそもこの2人はNYで見たいもの、見せたいものが噛み合っていないと感じます。ギャッピーはバーやポーカーとNYの土地に根ざした文化を愛しているが、アシュレーは芸能界というテレビの向こう側の文化を愛している。またアシュレーは取材の延長で芸能人達のパーティーに参加するのですが、彼女はそれを自然と楽しめる。このパーティーは、ギャッピーがスノッブなものと嫌い敬遠した母のパーティーと、そう変わらないものなのです。スノッブと敬遠する都会の感覚と、何の疑問を持たずそれを受け入れられる田舎の感覚とで大きな隔たりがあります。
ただスノッブと形容する感覚こそがスノッブであるとも指摘できてしまいます。美しいNYの街並み、劇中BGMとして流れる洒落たジャジーなピアノ、ワンカット風のカメラワーク、洒落た台詞回し、この映画そのものがスノッブと指摘できてしまうのです。
映画に体温を求めるむきのある人には合わないとも感じました。