劇場公開日 2020年7月3日

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「煮えきらない…」レイニーデイ・イン・ニューヨーク nobさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5煮えきらない…

2020年7月11日
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鑑賞方法:映画館

ティモシー・シャラメは素敵だ。
今回の役所は、昔で言えば“高等遊民“と言ったところか…
なんとも煮えきらないこの役を、憂いを持って演じている。

エル・ファニングもいい。
コロコロ変わる表情は見ているだけでHappyになれる(少々やりすぎ感はあるが)。

セレーナ・ゴメスもジュード・ロウも楽しそう。
ジュード・ロウは浮気をされる3枚目。この人はこんな役が好きなのだろう。タクシーのシーンはこの作品で一番楽しかった。

物語はハプニングの連続で、状況はファニングの表情と同じくコロコロ変わるのだが、構造がシンプルなので観客が道に迷うことはない。
シチュエーション・コメディとして“クスッ“と笑える箇所もあり、作品全体としては好印象を与える。のだが…

これを ウディ・アレン の作品としてみれば…大いに不満だ。

言わずもがなだが、この作品は“恋愛映画“でも“成長物語“でもない。主演の二人は初めからズレまくっているし…その後も予定調和な結末のみ。
とすれば、期待するのは、“雨のニューヨーク“を舞台に素敵なコメディを!なのだけれど…。

彼の作品に期待する、人間に対する“鋭い視線“と“軽快なテンポ“がない。
アレンっぽい描き方ではあるけれど、“っぽい“のだ。アレンとしてはベタで「ブルー・ジャスミン」でみせたキレがない。
一番の疑問は“ギャツビー“がパーティに連れてゆく“偽アシュレー/娼婦“の扱いだ。そこをきっちり拾っていないので、“最後の告白“が浮いてしまった。そういう雑さが、アレン作品特有の“振幅の大きな人間愛(もしくは面白さ)“を消してしまっている。

撮影は ヴィットリオ・ストラーロ。
ベルトリッチと組んだ作品群(ラスト・タンゴ・イン・パリ/1900年など)が記憶に深い。しかし撮影も残念ながら、雨のニューヨークの雰囲気を存分に味わえたとは言い難い。

セレブリティ(1998)が懐かしい。
歳を重ね、人間的寛容さが作品の甘さになっているのか?
そこは分からないが、主人公のように煮えきらない作品であった。

nob